そうすると、米国の「法の支配(Rule of Law)」は継続している。そして、このルールが「壁」ではなく「盾」である以上、中国共産党政権がルールを守れば盾を下げる。つまり、自由主義国がよって立つルールに中国を取り込むというエンゲージメント政策は継続している。

國分:その通りです。「法の支配」は続いています。ただし、エンゲージメント政策についていうと、その対象は中国の国民です。共産党に対してではありません。この点は、ポンペオ国務長官が7月の演説で「米国と協力して中国共産党の行動を変えさせよう」と中国国民に訴えたことに表れています。同氏は演説の結びの一節に「中国国民に加護あれ(May God bless the Chinese people.)」との文句も挿入しました。

EUも米国に同調し始めた

これまでご説明いただいた米国の考えをEU(欧州連合)は理解しているのでしょうか。

國分:理解しています。中国政府が香港国家安全維持法の審議を開始すると、英連邦の一角を成すインドは6月に中国がその内容を発表したのを受けて、華為技術(ファーウェイ)や興通訊(ZTE)など中国企業からの通信機器をインド国営通信会社が調達するのを禁止する意向を表明しました。

香港国家安全維持法を境に「中国は国際的な約束を守らない国だ」という見方が一気に広がりましたね。南シナ海で国際法を疎んじる行為にはピンとこなくても、香港問題は身近に感じたということでしょうか。

國分:はい。これを受けて、欧州各国によるファーウェイ排除が加速しました。7月には英国が通信各社に対し、第5世代移動通信システム(5G)向け設備の導入を禁止しました。フランスも即座に後を追い、5G通信網からファーウェイ製品を排除する意向であることが分かっています。

 EUは存在そのものが法に依存しています。「二度と欧州大陸で戦争は起こさない」ことを目標に、共存するための法によって一体体制を築いてきたのですから。よって、法をないがしろにする中国を認めることは、自らの存在基盤を弱めることになってしまいます。ただでさえ、難民問題や新型コロナ危機対応をめぐってその一体性が揺らいでいるときに中国の行為を容認することはできません。

 こうした状況を鑑みると、日本の菅義偉政権は、自由を守るためのルール作りに貢献すべきだと私は考えます。

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