特定の政策に限定して対抗策を講じる
第2の違いは、エコノミック・ステイトクラフトが、特定の政策の遂行に携わる個人や企業に限定して制裁を科すピンポイントの措置を講じる意図を持って議論されていることです。従来は国家間で経済制裁を科し合う手法を取ってきました。これだと影響はそれぞれの国の国民全体に及びます。それゆえ、軍事的な衝突に発展する可能性も大きかった。ピンポイントの措置ならばこのリスクを小さく抑えることができます。相手国に対する国民全体の感情を悪化させることも少ないでしょう。
この前提として重要なことは、米中のエコノミック・ステイトクラフトの応酬が、軍事による戦争を回避すべく、経済戦争だけで決しようとしていることです。
これは、戦争が非合法化された後に始まった米ソ冷戦においても軍事衝突のリスクを最初から念頭に置いていた状況を踏まえると、歴史上初めて、軍事衝突ありきとせずに始められた冷戦と捉えられます。よって米ソの冷戦とは大きく様相が異なります。 残り2169文字 / 全文4607文字 「おすすめ」月額プランは初月無料 会員の方はこちら 日経ビジネス電子版有料会員なら 人気コラム、特集…すべての記事が読み放題 ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題 バックナンバー11年分が読み放題この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
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