「この形の中国を普通の国として扱うことはできない」

國分:いま米中がお互いに繰り出すエコノミック・ステイトクラフトは、これまでの経済制裁とは大きく異なります。米国の意図が、経済戦争によって中国共産党の態度の転換をゴールに置いたところにあるからではないかと考えます。2つに分けてお話ししましょう。

 第1の違いは、米国の意図です。これはマイク・ポンペオ米国務長官が7月に行った演説に明らかです。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

「世界の自由国家は、より創造的かつ断固とした方法で中国共産党の態度を変えさせなくてはならない。中国政府の行動は我々の国民と繁栄を脅かしているからだ。この形の中国を他国と同じような普通の国として扱うことはできない」という趣旨の発言がありました。

國分:米国はこれまで中国に国際秩序やルールに則るだけでなく、世界が抱える問題解決に関与させることで、将来自由化が実現されることを期待してきました。しかし、昨今の中国の様々な行動を踏まえ、この期待はかなわないという結論に至り、経済戦争で対応するしかないと決断したのです。米ソ冷戦における米国のゴールは囲い込みによりソ連およびその衛星国の拡大能力をそぐことでした。つまり、ソ連共産党の体制転換までは考えていませんでした。

 しかし、ポンペオ国務長官らのスピーチからは、中国に対してはゴールを共産党政権の転換に置いた可能性が高く、それゆえに米政府は米企業・団体に対し、中国政府の圧力に屈することなく米国の価値観を表明し続ける姿勢を求め始めたわけです。マイク・ペンス米副大統領が米プロバスケットボール協会(NBA)やナイキに対して厳しい発言をしたのはその一例です。

ペンス副大統領は昨年10月、「NBAは言論の自由を封じ、(中国の)完全子会社のように振る舞っている」と発言しました。NBAに所属するヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャーが香港のデモを支持する発言をしたことに対し、NBAが中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」に「不適切な発言に非常に失望している。中国の友人やファンを傷つけた」と釈明したことに反発したものですね。

國分:はい。ここで強調しておきたいのは、米国のこの姿勢がトランプ政権にとどまるものではないことです。昨年11月に米ワシントンを訪れいくつものシンクタンクと議論しました。中国共産党に転換を求める考えは超党派になっており、保守もリベラルも、すべてのシンクタンクに共通していました。

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