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国家安全保障戦略の改定が進む。法政大学の森聡教授は国産技術を「知る」「守る」「育てる」「活かす」仕組みづくりに言及するよう提案する。これは企業のビジネス活動に直結する。米国防総省は技術を「育てる」べくベンチャーキャピタルのような機能を果たす部門を作った。国産技術を「活かす」ことができるかは、米国製装備との相互運用性が左右する。(聞き手:森 永輔)

(写真:miyata/アマナイメージズ/共同通信イメージズ )

技術に関するまとまった記述として、31ページに(1)防衛生産・技術基盤の維持・強化があります。の戦略的アプローチを構成する6つ目の項目「国家安全保障を支える国内基盤強化と内外における理解促進」の先頭(1)との位置づけです。ここで改めるべき点はありますか。

(1)防衛生産・技術基盤の維持・強化
防衛生産・技術基盤は、防衛装備品の研究開発、生産、運用、維持整備等を通じて防衛力を支える重要な要素である。限られた資源で防衛力を安定的かつ中長期的に整備、維持及び運用していくため、防衛装備品の効果的・効率的な取得に努めるとともに、国際競争力の強化を含めた我が国の防衛生産・技術基盤を維持・強化していく。

:「防衛生産・技術基盤」を有効なものにするため、日本の企業が取り組むものと、外国企業から購入するものを判別し、国産でやると決めたものにヒトとカネという資源を集中投入しやすくする仕組みをつくるべきだと考えます。そこには、契約手続きの簡素化など、実務的な負担を軽減するような、あまり目立たない改革なども含まれるべきだと思います。

「日本に頼るしかない」技術に資源を集中して「守る」

森 聡(もり・さとる)
法政大学教授。専門は国際政治学、現代米国外交、冷戦史。1995年に京都大学法学部を卒業し、翌年、外務省に入省。外務省退職後、東京大学大学院で博士号を取得し、2008年に法政大学准教授、10年から同大教授。この間、ジョージワシントン大学シグール・アジア研究所やプリンストン大学で客員研究員を務める。主な研究テーマは米国のアジア戦略、先端技術と安全保障。

 元政府関係者からこんな話を聞いたことがあります。「英国では、主権国家として技術基盤を維持しておきたい最低限の範囲を決め、その部分は政府が支援して守る仕組みを整えている」

 日本にも同様の考え方と仕組みが必要なのではないでしょうか。日本にしかない技術、日本が競争優位を持つ技術を特定して、それを徹底的にとがらせ、諸外国が「日本に頼るしかない」と認識する環境を築く。

 そのために技術を「知る」「守る」「育てる」「活かす」制度を構築するよう提案します。「知る」は、日本にしかない技術、日本が競争優位を持つ技術を把握するためのサーベイの体制です。具体的には省庁横断的な技術情報のデータベースをつくる。防衛省が持っている研究開発予算は限られています。政府の科学技術関係予算は、約半分が文部科学省で、その次が経済産業省で約16%となっています。省庁間で情報共有しない手はありません。

 例えば文科省が資金を提供している研究案件から、実は防衛にも応用できる技術がみつかるかもしれません。外国が狙っている技術の開発に取り組む大学の研究室があったら、セキュリティーを確保する仕組みを導入しているかどうか所管省庁が注意喚起することもできるでしょう。必要であればセキュリティーのシステムの導入を支援する。これは「守る」の範疇(はんちゅう)に入りますね。

続きを読む 2/4 日本企業に次期戦闘機は開発できるか

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