日本の安全を保障するために必要な先端技術を「守る」手段として、①投資規制、②輸出管理、③機微技術やデータ窃取の取り締まりが想定される。いずれも経済戦争と背中合わせだ。課題の一つが「悪意なき技術移転」の取り締まり。共同研究の過程で、意図せず、機微技術が流出する懸念がある。だが禁止すれば、科学のブレイクスルーを阻害しかねない。安全保障と技術の関係に詳しい、法政大学の森聡教授に聞いた。(聞き手:森 永輔)

前編はこちら)

華為技術は米政府などから輸出管理の対象になっている(写真:ロイター/アフロ)

ここから、国家安全保障戦略をいかに改定すべきか私案をお伺いします。企業のビジネス活動にも、研究機関の活動にも大きな影響を与えることになると考えます。

森 聡(もり・さとる)
法政大学教授。専門は国際政治学、現代米国外交、冷戦史。1995年に京都大学法学部を卒業し、翌年、外務省に入省。外務省退職後、東京大学大学院で博士号を取得し、2008年に法政大学准教授、10年から同大教授。この間、ジョージワシントン大学シグール・アジア研究所やプリンストン大学で客員研究員を務める。主な研究テーマは米国のアジア戦略、先端技術と安全保障。

:中国がもたらす脅威を以上(本誌注:前編を指す)のように整理したところで、主テーマである「技術」についてです。国家安全保障戦略の17ページに(10)技術力の強化という項があります。

同戦略は次のような構成を取ります。Iは同戦略を策定する趣旨、IIは基本理念、IIIは安全保障環境と課題。そしてIVが我が国がとるべき戦略的アプローチ、つまり具体策ですね。戦略的アプローチは6つの項目から成り立っています。そのうちの1つ、「我が国の能力・役割の強化・拡大」の(10)として「技術力の強化」があります。

(10)技術力の強化
 我が国の高い技術力は、経済力や防衛力の基盤であることはもとより、国際社会が我が国に強く求める価値ある資源でもある。このため、デュアル・ユース技術を含め、一層の技術の振興を促し、我が国の技術力の強化を図る必要がある。

 技術力強化のための施策の推進に当たっては、安全保障の視点から、技術開発関連情報等、科学技術に関する動向を平素から把握し、産学官の力を結集させて、安全保障分野においても有効に活用するように努めていく。

 さらに、我が国が保有する国際的にも優れた省エネルギーや環境関連の技術等は、国際社会と共に我が国が地球規模課題に取り組む上で重要な役割を果たすものであり、これらを外交にも積極的に活用していく。

続きを読む 2/3 輸出管理は「エンドユーザー」を判断材料に

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