国家安全保障戦略の改定が議論の俎上に上る。米国の外交・安保政策と技術の安全保障を専門とする法政大学の森聡教授は「中国の行動をどう見るのか。日本の見方を示せ」と主張する。「バイデン大統領になったら、現行の対中強硬路線が修正される。日本が今の米国の路線に合わせれば、“はしごを外される”かもしれない」との意見がある。「日本自身の腰が定まっていれば、米政権が代わっても右往左往する必要はない」(森教授)

(聞き手:森 永輔)

1990年の湾岸戦争では、精密誘導兵器が威力を発揮した(提供:DOD/AP/アフロ)

国家安全保障戦略の改定が話題に上るようになりました。「技術」に関する言及について、どうお考えですか。追加すべき点や、表現を改めるべき点はありますか。

:安全保障における技術の重要性が増していると思います。

 ただ今回の改定では、大きな柱の1つとして、中国の動向について触れることになるのではないでしょうか。なので、まずこちらの話をしましょう。

森 聡(もり・さとる)
法政大学教授。専門は国際政治学、現代アメリカ外交、冷戦史。1995年に京都大学法学部を卒業し、翌年、外務省に入省。外務省退職後、東京大学大学院で博士号を取得。2008年に法政大学准教授、10年から同大教授。この間、米ジョージワシントン大学シグール・アジア研究所や米プリンストン大学で客員研究員を務める。主な研究テーマは米国のアジア戦略、先端技術と安全保障など。(写真:加藤 康、以下同)

 私は、中国の進んでいる方向について日本自身の認識や評価を明確にすべきだと考えます。

 専門家との議論の中で、次のような意見が耳に入ります。「日本は米国と中国の間でいかにバランスを取るべきか」「米国の方針にどこまで付き合うべきか」。米国の厳しい対中姿勢そのものに対する違和感に加えて、11月に予定される米大統領選挙も背景にあるようです。「民主党のジョー・バイデン候補が当選しても、中国に対する見方は厳しいままだろうが、少なくとも現行の対中強硬路線は修正されるかもしれない。だから日本が中国に対してトランプ政権のような厳しい姿勢を不用意に示せば、“はしごを外される”事態になるかもしれない」という危機感もあるようです。

 米国の姿勢に照らして日本の対中姿勢を決めようとする見方に違和感を覚えます。米国の政権がどのようなものであれ、日本は中国が取る進路について日本自身の見方を提示すべきです。例えば、中国政府が香港などに対して取っている行動をどう評価するのか(関連記事「東京五輪からバブル期の日本と重なる中国ナショナリズム」)。習近平(シー・ジンピン)国家主席が進める「強国化」「大国化」路線にどのような姿勢を示すのか。中国が尖閣諸島や東シナ海、南シナ海で取っている行動や一帯一路戦略に、どのような問題を見いだすのか(関連記事「米国が領土問題に関与へ、いずれ日本は踏み絵迫られる」)。日本自身の腰が定まっていれば、米政権の態度が硬軟多少変わったところで右往左往する必要はないはずです。

続きを読む 2/3 技術で軍備の優位を築くことが難しくなった

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