河野防衛相が6月15日、イージス・アショア配備計画の停止を明らかにし、日本のミサイル防衛に激震が走った。代替策はいかにあるべきか。敵基地攻撃能力は必要なのか。防衛相を務めた経験を持ち、安全保障法制の審議では担当大臣も務めた危機管理の重鎮、中谷元・衆院議員に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

河野太郎防衛相が6月15日、イージス・アショア配備計画の停止を明らかにし、日本のミサイル防衛に激震が走りました。政府は、「相手の領域内でも攻撃を阻止する能力」に関する中谷さんら自民党からの提言を踏まえて、善後策を9月末にまとめる方針です。

 イージス・アショアの代替案として、どのような装備が適切とお考えですか。

中谷:まず現状について整理しましょう。日本は既にイージス艦と地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を配備しており、日本全域を対象にした弾道ミサイル防御は当面可能な状態にあります。問題は、イージス艦を運用する海上自衛隊に重い負担がかかっていること。現在、8隻体制を実現すべく取り組みを進めていますが、十分とは言えません。

<span class="fontBold">中谷 元(なかたに・げん)</span><br />1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)
中谷 元(なかたに・げん)
1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)

 私は、イージスシステムの最新化と敵ミサイルの探知機能強化を進めることで、イージス・アショアに期待していた役割を代替すべきだと考えます。

 イージスシステムの最新化は、具体的には①LOR/EORと②IAMD(統合防空ミサイル防衛)の2つの採用を指します。前者のLOR(Launch On Remote)は、イージスシステムの主要な構成要素であるレーダーと迎撃ミサイルの発射装置を別の場所に置き、ネットワークで接続して一体的に運用する技術です。例えば日本海側*を航行するイージス艦Aに設置したレーダーで探知した敵ミサイルに対し、太平洋側を航行するイージス艦Bから迎撃ミサイルを発射する、といったことが可能になります。

*:敵ミサイルの発射装置に近い位置のレーダーの方が探知しやすい

 EOR(Engage On Remote)は、ミサイルを発射する機能と、敵ミサイル迎撃までの誘導機能を切り分ける技術です。イージス艦Aが発射した迎撃ミサイルを、イージス艦Bが誘導することが可能になります。

 米軍がいまLOR/EORの開発を進めています。現行のイージスシステムは、イージス・アショアであれイージス艦であれ、レーダーと迎撃ミサイル発射装置、誘導機能を同じ拠点、同じ船の上に設置することを前提にしています。

続きを読む 2/5 脅威は弾道ミサイルにとどまらない

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