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 河野太郎防衛相が6月15日、イージス・アショア配備計画の停止を明らかにし、日本のミサイル防衛に激震が走った。

 代替策が伴わないこともあって、敵基地攻撃能力の議論が大きな盛り上がりを見せている。自民党は8月4日、「国民を守るための抑止力向上に関する提言」を安倍晋三首相に申し入れた。「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」を例に挙げ、抑止力を向上させる必要があると提言した。盾の役割を担うイージス・アショアが停止となった分、矛の役割を持つ敵基地攻撃能力を配備することで「抑止力を高める必要がある」という理屈だ。

 キーワードは「抑止力」。果たしてイージス・アショアや敵基地攻撃能力に抑止力はあるのか。それはいかなるものなのか。抑止理論の第一人者の一人、高橋杉雄・防衛省防衛研究所防衛政策研究室長に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

北朝鮮「太陽節」記念するパレード SLBMが初登場(写真:AP/アフロ)

敵基地攻撃能力の議論が大きな盛り上がりを見せています。自民党は8月4日、「国民を守るための抑止力向上に関する提言」を安倍晋三首相に申し入れ、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」を検討するよううながしました。

 キーワードは抑止力ですね。果たして、イージス・アショアや敵基地攻撃能力に抑止力はあるのか。抑止理論の観点からはどう考えるべきなのでしょうか。

国民を守るための抑止力向上に関する提言

わが国への武力攻撃の一環として行われる、国民に深刻な被害をもたらしうる弾道ミサイル等による攻撃を防ぐため、憲法の範囲内で、国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組が必要である。

高橋:抑止力をどのように定義するかによって「ある」「なし」の答えは変わってくると思います。

高橋杉雄(たかはし・すぎお)
防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長。専門は国際安全保障論、現代軍事戦略論、日米関係論。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。同大学院同研究科で政治学修士、ジョージワシントン大学コロンビアンスクールで政治学修士を取得。1997年、防衛研究所に入所。(写真:加藤 康、以下同)