最もよく取り上げられる分類は「懲罰的抑止」と「拒否的抑止」ですね。防衛省は前者を「耐えがたい打撃を加える威嚇に基づき、敵のコスト計算に働きかけて攻撃を断念させるもの」と、後者を「特定の攻撃的行動を物理的に阻止する能力に基づき、敵の目標達成可能性に関する計算に働きかけて攻撃を断念させるもの」と整理しています。

高橋:ミサイル防衛をこの分類にそのまま当てはめるとちょっと分かりにくいかもしれません。

 私は最近は「報復による抑止」と「損害限定による抑止」に区別した方が分かりやすいと考えています。報復による抑止は、攻撃されたら攻撃し返すもので、基本的には「懲罰的抑止」です。相手が目標を達成すること(攻撃)によって得られる利益と、それに伴って被る打撃を比べたときに打撃の方が大きければ、相手は攻撃をあきらめるわけです。

 損害限定による抑止は、相手の目標達成を物理的に阻止するもので、「拒否的抑止」の元にある考え方です。具体的には、①相手のミサイルをミサイル防衛システムで迎撃するとか、②精密誘導攻撃兵器を使って相手の攻撃力を撃破するとか、③国民保護体制(民間防衛)を充実させて被害そのものが生じないようにする、などの手段が考えられます。

 この区別に基づいて整理すると、イージス・アショアには損害限定による抑止があると評価できます。ただし、報復による抑止は全く働かない。一方、攻撃能力は、理論的には両方の抑止力を持つ可能性があります。核戦力は典型的な報復による抑止力です。ただ、日本で言う敵基地攻撃能力は、ターゲットを軍事目標に限っていますから、損害限定の抑止力というように位置づけられます。

 つまり、イージス・アショアと敵基地攻撃能力のどちらにも損害限定による抑止力がある、というのが答えになります。

報復による抑止では1発目を防げない

 報復による抑止と損害限定による抑止にはそれぞれ短所があります。

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