石破茂・元防衛相。ペロシ米下院議長の訪台直前に台湾を訪れ、蔡英文総統らと会談していた(写真:菊池くらげ)
石破茂・元防衛相。ペロシ米下院議長の訪台直前に台湾を訪れ、蔡英文総統らと会談していた(写真:菊池くらげ)

 米議会下院のペロシ議長の台湾訪問に反発し、中国が大規模な演習を実施しました。弾道ミサイルも発射。1995~96年の第3次台湾海峡危機を彷彿とさせる状況が私たちの目前に現れたのです。

 とはいえ、中国がこのまま台湾の武力統一に進む可能性は高くないと思います。中国が米国の介入を避けたいと考えていることは、この演習にも表れているのではないでしょうか。ペロシ議長が台湾を離れてから弾道ミサイルを発射したからです。

 中国の習近平国家主席は内政の面からもリスクは冒せないでしょう。秋に予定される中国共産党大会において、かつて誰もやったことのない3選を決めようとしているといわれています。そうであるならば、この時期に米国と事を構えるわけにはいかないでしょう。

 もちろん、秋以降に中国がどう動くかは分かりません。3選を獲得するには、それなりの理由が必要。習国家主席が台湾統一を約束して3選を得ようとする可能性も否定できません。

 加えて、中国はさまざまな問題を抱えています。一人っ子政策の影響で就労人口が急激に減少に向かう。医療面でも問題は多々あり、長期にわたって療養が必要な糖尿病患者の数は中国が世界で最も多いそうです。不動産市場の回復にも時間がかかりそう。これらにより、人々の不満が高じているといわれています。ここから目をそらすため、中華民族の復興、それに欠かせない台湾統一に向けて行動を起こすことも考えられます。

在台湾の邦人は救出できるか

 よって日本も、今後起こり得るありとあらゆる事態を想定して準備しておく必要があるでしょう。まず考えるべきは台湾にいる邦人の救出と輸送です。在台邦人をいつ、誰が、どのようにして、どの空港・港に誘導するのか。「人道回廊」は確保できるのか。中国は台湾統一を内政問題と主張することが想定されるので、「人道回廊」を設置する必要がない、と言うかもしれません。そうしたら、地上の移動も、海・空における移動も、危険が伴う懸念が生じます。

 こうした点について、政府はきちんと考えていると信じていますが、自民党としてもある程度の可能性と対応策については洗い出しておくべきでしょう。

 同時進行で起こるのは、台湾から日本に避難してくる人々への対応です。日本の領土の南西諸島が最も近いのですから。台湾からの飛行機や船が殺到すること、国籍を問わず多数の避難民を受け入れること、を予測した法整備、体制整備が必要です。

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