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マイク・ポンペオ国務長官。トランプ大統領からの禅譲を期待しているとみられる(写真:代表撮影/AP/アフロ)

中国共産党を批判するポンペオ米国務長官の発言が注目を集める。米国政治に詳しい川上高司拓殖大学教授はこれを「トランプ再選戦略の一環」と見る。米政府は発言だけでなく行動を過激化させており、武力紛争をあおる構えだ。米中が衝突する可能性がある場所として台湾が挙げられる。台湾有事は日本有事でもある

(聞き手 森 永輔)

マイク・ポンペオ米国務長官が7月23日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席や中国共産党を批判する演説をして注目を集めました。「中国共産党から自由を守ることは今を生きる我々の使命だ」「習近平総書記は破綻した全体主義思想の信奉者だ」などと発言し、強く批判しました。中国共産党の体制そのものに問題の根源があるとの認識を示し、従来の発言とは一線を画すとの見方があります。川上さんは、この発言をどう評価しますか。

川上 高司(かわかみ・たかし)氏
拓殖大学教授
1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。(写真:大槻純一)

川上:私は一線を画すものとは思いません。米政権幹部による共産党批判はこれまでにもありました。

 例えば、マイク・ペンス副大統領が2018年10月と19年10月の演説で、共産党批判を強めました。ポンペオ国務長官の発言で注目すべきは、批判の度合いがこれらの演説よりも一歩進んだことです。今年に入ってから、ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やウィリアム・バー司法長官による中国批判演説があったことも同期しています。

ポンペオ国務長官は今回の発言に先んじて、7月13日に「南シナ海の海洋権益に対する中国の主張は完全に違法」との声明を発表。続く15日に「中国に領土を侵害されていると考えるすべての国を支援する」と発言しています。

三重苦を逃れるには“戦争”しかない

川上:そうですね。

 加えて、言葉だけでなく、行動を伴うものになってきました。その行動も徐々に強いものになっています。第1弾は制裁関税に始まる「貿易」。それが第2弾である「撤退」のフェーズに進みました。

「撤退」ですか?

川上:ええ、7月21日に米テキサス州ヒューストンの中国総領事館に閉鎖を要求したことを指します。「締め出し」ですね。中国がここを拠点に、長年にわたって知的財産を盗もうとしてきたというのが理由です。華為技術(ファーウェイ)に対する制裁は「貿易」に関わる措置であるとともに、「撤退」の措置と位置付けることもできます。米国市場からの「締め出し」ですね。

 同総領事館については、閉鎖期限を過ぎた同24日、米連邦当局者が中に立ち入ることまでしました。これには驚きました。閉鎖したとはいえ、領事館内は治外法権ですよね。

 米国は行動において第3のフェーズ、すなわち「軍事紛争」の入り口に立っているとみています。

え、軍事紛争ですか。米国はなぜそこまで対立をエスカレートさせているのでしょう。

川上:理由は大きく2つあります。1つは、覇権をめぐる対立。