
北欧のフィンランドがNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請した。ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにして、自国の安全に危機を覚えた。だが、それだけではない。政策研究大学院大学の岩間陽子教授に聞いた。
(聞き手:森 永輔)
フィンランドが5月18日、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請しました。これをどう評価しますか。
岩間陽子・政策研究大学院大学教授(以下、岩間):フィンランドとスウェーデンという中立主義を取ってきた国がNATOへの加盟に向けて歩みを進めました。この2つの国は1960~70年代に積極的な外交を展開し、欧州安全保障の秩序を構築するのに大きな役割を果たしました。両国は、ロシアのプーチン大統領がこれを壊したことに大きな怒りを感じたのでしょう。
1975年に調印されたヘルシンキ最終文書は、冷戦期の欧州を安定に導く大きな成果でした。

北欧2国が主導した欧州の秩序をプーチンがぶち壊した
同文書は3つの柱の1つに欧州の安全保障を据え、国境の不可侵を定めたものですね。
岩間:これは、欧州が自由主義諸国と共産主義諸国に分かれていようと、核戦争をしないということに共通の利益があることを認め、東西ドイツ間に正当性をめぐる争いがあろうと、戦争で国境を変えることはしないという約束でした。東西欧州の安定に大きく貢献しました。
実はこのヘルシンキ最終文書は、60年代に始まる一連の緊張緩和政策の頂点でした。その原点は62年のキューバ危機にあり、ここで東西間に核戦争を避けるという最低限の了解ができたことにより、中立諸国が外交で活躍する下地ができました。
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