中国民兵の訓練風景(写真:新華社/アフロ)

(前回はこちら

台湾有事となれば、南西諸島が巻き込まれ日本有事に発展する可能性が極めて高い、と前回うかがいました。とはいえ、日本が直接攻撃されるに至らないケースも考えられます。自衛隊が正当に行動するための法的根拠は担保されますか。

渡部:日本は2015年に安全保障法制を成立させ、自衛隊の活動範囲を広めました。台湾有事を、時の首相が重要影響事態や存立危機事態に認定すれば、それぞれに応じた行動を取ることができます。これは非常に大きな進歩です。

領域警備法を制定せよ

渡部悦和(わたなべ・よしかず)
元陸将。陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、東部方面総監を歴任して、2013年に退官。元ハーバード大学上席特別研究員。(写真:加藤 康、以下同)

 十分でないとすれば、グレーゾーン事態に対処するための法整備が見送られたことです。例えば、台湾有事が進行する過程で、日本の介入を防ぐべく、中国が尖閣諸島でもめ事を起こし、日本政府の動きを鈍らせようとすることが考えられます。

 例えば武装漁民を尖閣諸島に上陸させる。多数の中国漁船が尖閣諸島周辺に集まってきたかと思ったら、その乗組員の一部が尖閣諸島に上陸した。彼らは、普通の乗組員ではなく、武装している。迫撃砲なども備えており、日本の警察や海上保安庁の手には負えない。このような事態が起きるかもしれません。

そうした事態に備えて、自衛隊が警察の役割を担う海上警備行動や治安出動が自衛隊法に定められています。

渡部:そうなのですが、海上警備行動や治安出動に取り組む自衛官が武器を使用できるのは、原則的には正当防衛や緊急避難にとどまります。警察官職務執行法7条に定められた範囲でしか武器を使用できない。これでは迫撃砲に対抗することはできません。

 なので、安保法制とともに領域警備法を整えるべきでした。警察や海上保安庁が手に負えない強力な武器を装備する相手に対して、自衛隊が相応のレベルで武器を使用できるようにする法律です。相応のレベルがどの程度なのかは、生じた事態に応じてその都度ROE(部隊行動基準)を定める。

続きを読む 2/3 中国空母の航海情報を共有する法整備を

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