抑止を高める「インサイド・アウト防衛」

全領域戦(All-Domain Warfare)はすでに始まっている。台湾本島への本格的な着上陸作戦さえ起こりかねない。短期激烈戦(Short Sharp War)や弾道ミサイル攻撃の場合、米政府が介入を決めても米軍の来援が間に合わない可能性が高い。そして、南西諸島が台湾有事の戦域に入る。とすると、抑止力を高め、そのような事態が起こる可能性をなんとしても引き下げる必要があります。そのために何をすればよいのでしょうか。

渡部:私は米国のシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」が2019年5月に発表した「海洋プレッシャー戦略」に注目します。そして、日米両国はこの戦略の実現に向けて現実に歩みを進めているとみています。

 中国がA2AD*と呼ぶ戦略を推進しているのはよく知られるところです。

*:Anti-Access, Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国が防衛ラインと考える第2列島線内の海域に空母をはじめとする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は日本列島および日本の南西諸島から台湾、フィリピンを経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す。

 海洋プレッシャー戦略を一言でいうと、米国とその同盟国および友好国がこのA2ADを中国に向けてやり返すものです。

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