ここに第1列島線防衛の要諦がある(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
ここに第1列島線防衛の要諦がある(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

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「台湾有事は日本有事」だ。 中国が台湾の武力統一を図れば、南西諸島はその戦域に入る。 日本は、そのような事態起きないよう努めなければならない。 その方策の1つが抑止力を高める「海洋プレッシャー戦略」だ。 アメフトに例えれば、 日本列島から台湾へと続く第1列島線上に対艦・対空ミサイルなどからなる ディフェンスライン(守備線)を敷く。 その後方に位置する爆撃機や艦船がラインバックとなり、 長射程のミサイルを使ってディフェンスラインをサポートする。

(聞き手:森 永輔)

台湾有事が烈度を増し、中国が軍事力を行使する段階に入ると、日本にどのような影響が生じますか。

渡部:南西諸島が巻き込まれ、日本も戦場の一部となります。台湾有事は日本有事と認識する必要があります。

与那国島は、台湾有事の戦域に入る

 まず、日本の最西端に位置する与那国島に被害が及びます。台湾とはおよそ110kmしか離れていません。「1つの戦域に入る」のは軍事の世界では常識です。

<span class="fontBold">渡部悦和(わたなべ・よしかず)</span><br> 元陸将。陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、東部方面総監を歴任して、2013年に退官。元ハーバード大学上席特別研究員。(写真:加藤 康、以下同)
渡部悦和(わたなべ・よしかず)
元陸将。陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、東部方面総監を歴任して、2013年に退官。元ハーバード大学上席特別研究員。(写真:加藤 康、以下同)

 次に、中国が台湾本島への着上陸作戦を考えるならば、米軍の介入を阻止すべく、沖縄本島の在日米軍基地を攻撃する恐れがあります。これは、すなわち日本への攻撃を意味します。

 将来に目を向ければ、人民解放軍が台湾を勢力下に置き陣地を築けば、沖縄県の与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島、鹿児島県・奄美大島と、飛び石を1つずつ伝うように南西諸島を攻め上ることも容易になります。

日本への影響は軍事面にとどまらず、経済面でも大きな影響が出そうです。

渡部:最も分かりやすいのは、日本と中東の産油国をつなぐシーレーンが遮断される恐れが生じることです。台湾と中国との間の台湾海峡はもちろん、台湾とフィリピンの間のバシー海峡の通航を容易に妨害できるようになる。ここは、原油はもちろん、日本向けのさまざまな貨物を積んだ船の主要な通り道です。

 半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとするハイテク企業との関係も断たれかねません。これらの企業は、日本の製造業のサプライチェーンにおいて重要な位置を占めています。

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