
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)新大統領は、日韓関係の修復を重視。1998年に発した「日韓共同宣言」の再確認との具体策を提案する。小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領(いずれも当時)は同宣言を発し、戦後最も良好な日韓関係を築いた。同共同宣言を再確認することの意義は何か。慶応義塾大学の西野純也教授が読み解く。
(聞き手:森 永輔)
(前編「韓国新大統領就任 「自由と平和を守る世界のリーダー」への課題」はこちら)
次に米韓関係について伺います。韓国の尹大統領は就任前、米誌Foreign Affairsに寄稿し、米韓関係を重視する意向を示しています。この論文において「より緊密な米韓同盟は、韓国の外交政策における中心軸だ」との見解を示しました。加えて、この論文の後段で「インド太平洋地域において自由で、開かれた、包括的な秩序を推進していく」との考えを記しています。
QUADへの参加に意欲
西野:「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は日本が打ち立てたコンセプトです。米国もこれを受け入れて推進するようになりました。これに韓国も乗り、共にやっていこうという考えです。それゆえ、米国と日本、オーストラリア、インドの4カ国で安全保障や経済を協議する枠組み「QUAD(クアッド)」に参加する意向を示してもいるのです。

注意を要するのは、韓国はQUADを対中政策ではなく、地域政策として捉えようとしている点です。対中包囲網に加わるのではなく、「グローバルリーダー国家として、自由と人権という価値に基づく普遍的な国際規範を積極的に支持し守る」役割をインド太平洋地域において果たそうとしているわけです。
ただし、FOIPは韓国内では対中政策として理解されています。このため尹政権がFOIPに対し前のめりになりすぎると、野党や世論の反発を招きかねません。反対派の動向も含めて注意が必要です。
ちなみに、米国が掲げたFOIPについては文在寅(ムン・ジェイン)政権(当時)も同意していました。
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