フィンランド首脳がNATO加盟をすみやかに申請すべきだと宣言した。ロシアのプーチン大統領は「両国の関係を悪化させる可能性がある」とけん制する。 ロシアは、フィンランドのNATO加盟がもたらし得るどんな事態を警戒しているのだろうか。それは、従来の中立国フィンランドではあり得なかった「“核の脅威”の影」かもしれない。フィンランドが導入する戦闘機F-35A Block4は核爆弾が搭載可能になり得るからだ。そして、NATOに加盟すれば「核シェアリング」への道も開けるかもしれない。フジテレビジョンの能勢伸之・上席解説委員に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

ステルス性に優れる第5世代戦闘機F-35Aは「Block4」から核爆弾を搭載できるようになる(写真:ロイター/アフロ)
ステルス性に優れる第5世代戦闘機F-35Aは「Block4」から核爆弾を搭載できるようになる(写真:ロイター/アフロ)

フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が2022年5月12日、NATO(北大西洋条約機構)加盟を速やかに申請したいと宣言しました。近く、決定される見込み。ウクライナ危機を前にして、「フィンランドの安全保障を強化する」のが狙いです。

 フィンランドは1300kmにわたってロシアと国境を接しており、ウクライナと同様の脅威を感じる位置にあります。ロシアがウクライナに侵攻して間もない3月2日、バルト海に浮かぶスウェーデンのゴッドランド島付近でロシア軍機が領空侵犯に及んだことが報じられました。恐らく核模擬弾を抱えていたとも報じられました。スウェーデンとロシアの間に位置するフィンランドの首都ヘルシンキからもわずか500kmの距離での出来事です。

 能勢さんは、フィンランドのNATO加盟をめぐって「ロシアが潜在的な核の脅威を感じている可能性がある」と見ていらっしゃいます。これはどういうことですか。日本では、事実上のNATO東方拡大にロシアが脅威を感じるであろうことは理解されているものの、それが核の脅威を与える可能性については知られていません。

能勢伸之・フジテレビジョン上席解説委員(以下、能勢):フィンランドもNATOも核について直截(ちょくせつ)的な発表をしているわけではありません。しかし、フィンランドと米国の行動が将来の核兵器受け入れの可能性を示唆しているようにも見えるからです。

フジテレビジョン上席解説委員。1981年、早稲田大学を卒業し、フジテレビジョンに入社。軍事・安全保障分野の取材に長く携わる。ミサイルに関する高い知見を有する。著書に『極超音速ミサイル入門』『極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」』など(写真:菊池くらげ)
フジテレビジョン上席解説委員。1981年、早稲田大学を卒業し、フジテレビジョンに入社。軍事・安全保障分野の取材に長く携わる。ミサイルに関する高い知見を有する。著書に『極超音速ミサイル入門』『極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」』など(写真:菊池くらげ)

 フィンランドは21年、米ロッキード・マーチンが開発した第5世代戦闘機「F-35A」を64機購入する契約を米政府と結びました。このF-35Aが「Block4」というモデルなのです。調べてみると、このモデルは「adds nuclear weapon capability」とあり、核兵器搭載可能になることが分かりました。具体的にはソフトウエアを改修し、「B61-12」という核爆弾を投下できるようになります。

 しかも、NATO加盟国と米国との核シェアリングに対応しているというのです。核兵器の使用を、米国とその他のNATO加盟国が協議して決める仕組みです。

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