石炭だけの禁輸ならば、ものすごく大きな影響が生じるわけではないのですね。もちろん、0.5%減となればたいへんなことではあるのですが。

原油価格は落ち着きを取り戻す方向

 原油についてはどうですか。

小林:日本の1次エネルギー消費にロシア産原油が占める割合は全体の0.3%でしかありません。

 中国の原油需要がロシア産によって満たされれば、中東産に余裕ができます。日本はこれを買うことができます。さらに、今年はOPEC(石油輸出国機構)が増産を進めるかもしれません。場合によっては、イランが輸出を再開する可能性もあります。

中国は原油輸入の44%ほどを中東に依存しています。上位にサウジアラビア、イラク、オマーンなどが名を連ねます。ここに余剰が生じ得るのですね。

 米国のシェールオイルの増産は期待できますか。事業者が増産しようとしても、投資家が資金を出すのを渋っていると聞きます。

小林:米国産シェールオイルも期待できます。ただし、中東産に比べて生産コストが高いという難点があります。

 原油市場は、世界的に見ると、供給に余剰が生じることが考えられます。

ウクライナ危機が継続する中で、原油価格は落ち着きを取り戻す方向です。指標銘柄であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)、北海ブレントともに、ロシアがウクライナに侵攻した直後の3月上旬には1バレル130ドル近くの値を付けました。しかし、その後、上がり下がりを繰り返しつつ、侵攻直前の同100ドル付近まで戻しています。中長期的には大幅な値上がりはないと見てよいのでしょうか。

小林:3月上旬に1バレル130ドルまで価格が跳ね上がったのは、核戦争、もしくは第3次世界大戦を引き起こしかねないとの懸念が高まったからだと考えます。ロシアのプーチン大統領が戦略的核抑止部隊に特別警戒を命じたのが2月27日。これが核戦争の脅威は現実のものであると人々に感じさせました。

 3月に入ると、ウクライナが呼びかける国際義勇軍に、NATO(北大西洋条約機構)加盟国から志願兵が相次いでいると報じられました。義勇軍とはいえ、NATO加盟国の国民が人道的被害にでも遭おうものなら、各国で対ロシア主戦論が勢いを得ます。そうなれば、第3次世界大戦に発展することも想定しなければなりません。

21年の原油輸入総額はおよそ6兆9000億円。当時の原油価格は1バレル65ドル程度なので、これが今後1バレル110ドルで推移すれば、原油輸入総額は11兆7000億円。差額の約4.8兆円(GDP比0.9%)がGDPの下押し効果ということになります。恐ろしい話です。

欧州がロシア産ガスを禁輸すれば「供給」が消える

小林:さらに恐ろしいのが天然ガスです。

 ロシア産天然ガスに対する日本の依存度は高くありません。1次エネルギー消費量全体の1.8%程度にとどまります。この程度は、オーストラリアやカタール、マレーシアなど既存の取引国との取引を拡大することで代替できるかもしれません。いずれも、中国の天然ガス輸入相手国の上位に位置する国々です。米国産のシェールガスも代替候補に挙がるでしょう。

 しかし、事は日本における代替の可否にとどまりません。欧州諸国がロシア産天然ガスの輸入を禁止すると、その分の供給量そのものが市場から消えてしまうからです。

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