ウクライナでの戦闘が絶えない。ロシア産エネルギー資源へのさらなる制裁の可能性が排除できない。「日本経済は原油と石炭を禁輸しても、ダメージはあるものの耐えられなくはない。だが「欧州がロシア産天然ガスを禁輸すれば『世界の終わり』を導く」。みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏はこう警告する。
(聞き手:森 永輔)

ロシアがウクライナに侵攻してから2カ月がたちました。東部マリウポリをめぐって激しい戦闘が続いており、収束する兆しはいまだ見えません。今後の展開として、エネルギー取引を対象とするさらなる経済制裁も視野に入ります。日本は4月8日、ロシア産石炭の輸入禁止を決めました。この禁輸措置の対象が原油や天然ガスに広がる可能性も否定できません。
今日は、仮にそうなった場合に生じるダメージについて伺います。小林さんは試算を出されていますね。
ロシア産石炭と原油は代替が可能
小林俊介・みずほ証券チーフエコノミスト(以下、小林):まず、ロシア産石炭の禁輸がもたらす負のインパクトからお話ししましょう。日本は1次エネルギー消費の27%を石炭に依存しています。そして、その13%をロシア産で賄っている。この分が輸入できなくなることが、実質GDP(国内総生産)成長率をどれだけ下押しするかを試算しました。
結果はマイナス1.9%でした。

今年の年初にお話を伺ったとき、2022年の実質GDP成長率を前年比2.7%増と見込まれていました。これが0.8%増(2.7%-1.9%)に鈍化することになりますか。
小林:そうなります。ただし、この数字はロシア産石炭の輸入を日本が全面禁止し、その代替が利かない場合を想定しています。
現実には、既に取引のあるオーストラリアやインドネシアからの輸入を増やすことで代替できると考えます。日本や欧州諸国がロシア産石炭を購入しなくなれば、中国がそれを買いたたくでしょう。その分、オーストラリアやインドネシアが生産する石炭が余剰となります。中国は、両国から石炭を購入していますから。なので、この余剰を日本は購入することができるでしょう。
ただし価格は上昇します。オーストラリアやインドネシアは自国にとって最も有利な価格で売ろうとするでしょうから。
よって、現実に生じる負のインパクトは価格上昇分ということになります。21年の日本の石炭輸入総額は約2兆7000億円。石炭価格が2倍になれば、それがそのまま名目GDPを約2兆7000億円(GDP比0.5%)押し下げる計算です。価格が2倍になることはないでしょうが。
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