(写真:AFP/アフロ)
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菅義偉首相とバイデン大統領が4月16日、日米首脳会談を行った。首脳会談の成果は何か。共同声明のどこに注目し、どう読み解くべきか。人権と台湾問題が注目されるが、ポイントはこれらにとどまらない。米中関係を専門とする気鋭の研究者、佐橋亮・東京大学准教授は「日米が大きな世界観を共有したことを示し、人権、台湾、環境、経済安全保障といった各論における協力策を並べた今回の共同声明は画期的」と評価する。同准教授に聞いた。

(聞き手 森 永輔)

菅義偉首相が訪米し、4月16日、ジョー・バイデン大統領が初めて対面で会う外国首脳として会談しました。佐橋さんはこの会談のどこに注目し、どう評価しましたか。

佐橋亮・東京大学准教授(以下、佐橋):まず前提として、今回の日米首脳会談はバイデン政権にとって、アジア外交第1ラウンドの総決算であると理解しています。就任後の約100日を振り返ると、バイデン政権の外交はすべて中国を念頭に組み立てられてきました。

<span class="fontBold">佐橋 亮(さはし・りょう)</span><br> 東京大学東洋文化研究所准教授。専門は東アジアの国際関係、米中関係。1978年生まれ。2002年、国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。2009年、東京大学大学院博士課程修了。神奈川大学法学部教授・同大学アジア研究センター所長、スタンフォード大学アジア太平洋研究センター客員准教授などを歴任し、2019年から現職。日本台湾学会賞、神奈川大学学術褒賞など受賞。(写真:加藤 康、以下同)
佐橋 亮(さはし・りょう)
東京大学東洋文化研究所准教授。専門は東アジアの国際関係、米中関係。1978年生まれ。2002年、国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。2009年、東京大学大学院博士課程修了。神奈川大学法学部教授・同大学アジア研究センター所長、スタンフォード大学アジア太平洋研究センター客員准教授などを歴任し、2019年から現職。日本台湾学会賞、神奈川大学学術褒賞など受賞。(写真:加藤 康、以下同)

3月12日には日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国(QUAD)首脳によるテレビ会議を初めて開催。3月16日には日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)、3月18日には米韓2プラス2、と2国間協議を相次いで実施。さらに、米アラスカ州アンカレジで米中外相会談を行いました。

佐橋:こうした一連のアジア外交の総決算として日米首脳会談がありました。米国にとって日本は、対中政策を進める上でその最前線に位置する同盟国です。よって、日本に対する米国の期待値は非常に高かった。そこで注目したのが、バイデン政権がどのような世界観を持っているのか、そして日本はそれに応えられるのか、でした。日本には日本の国益があります。すべて応えられるわけではありません。そこをいかにすり合わせるか。

 結果として、日本は米国の期待に対して最大限の打ち返しをしたと評価します。日本の利益にもかなっています。共同声明にあえて点数をつければ80点台。もちろん、日本側にも具体策において課題は残っていますが。

自由主義 vs 権威主義

バイデン大統領が持つ世界観はどのようなものですか。

佐橋:大きく2つのことが明らかになりました。1つは「自由」「民主主義」と権威主義が対立する構図を描いていることです。いまの国際社会を、「自由」と「民主主義」を奉じる国が、政府が自由で公正な選挙で選ばれていない権威主義の国による国際秩序への挑戦に対抗するものと捉えている。米国とともにこの対抗を支えるパートナーとして日本に期待し、「消え去ることのない」かつ「揺るぎない」日米同盟を重視する姿勢を示しました。

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