米国が主導する自律型ロボット部隊に入れず蚊帳の外

 ドローンの利用を拡大するのは中国だけではありません。例えば米軍は中東などでドローン部隊を運用しています。さらに、無人機(航空機)と無人艦(船)を用いる統合演習を米軍も英国軍も実施しています。

 米国は他の同盟国にも、自律型ロボットから成る部隊を共同で構成・運用するよう呼びかけています。AI(人工知能)を使用した兵器や、自律性を備える兵器では、中国がかなり先を行っています。米国は「米国だけでは中国に勝てない」と認識するようになりました。このため、自律型ロボットをめぐる共同開発・運用、基準づくりの輪を広げようとしているのです。

 しかし、この輪に日本は入れていません。このままでは、将来、米国の同盟国が自律型ロボットを持ち寄って混成部隊を運用するようになったとき、日本は取り残されることになりかねません。相互運用性を確保することができないからです。

外国製ドローンが原発上空を飛行する恐怖

有事にはどのような懸念がありますか。

古谷:今回のロシア軍と同様に、低高度の空からの攻撃に対する脆弱性を露呈する恐れがあります。日本の現行の防空システムはイージスを使った弾道ミサイル防衛に重点があります。つまり高高度を重視している。これに対して、低高度で飛翔(ひしょう)してくるドローンや巡航ミサイルに対する備えは十分とは言えません。

 例えば、ドローンによる原発への攻撃を防ぐ手立てを整えているでしょうか。先ほどお話ししたように、民生用ドローンでさえ火炎瓶で攻撃することができるのです。攻撃型や自爆型ドローンが海上自衛隊の護衛艦に対してswarm(スウォーム)攻撃を仕掛けてくることもあるでしょう。

*:多数のドローンが1つの群れとなって行動し、行う攻撃

 今、ウクライナで興味深い動きがあります。ウクライナ政府が中国のドローン大手DJIに対し、ロシアが利用するDJI製ドローンを「deactivate」すなわち機動できないようにするよう求めました。DJIは「それはできない。だがジオフェンスはできる」と回答したそうです。ジオフェンスとは、指定した空域をドローンが飛行しないように制御する機能。つまり、ロシアが運用するDJI製ドローンがウクライナの軍事施設や重要インフラの上空を飛べないようにすることができるということです。

 日本で利用されているDJI製ドローンはこのジオフェンスを使って、政府機関や重要インフラの上空を飛べないように制御しています。この設定を、中国政府がDJIに命じて解除したらどうなるでしょうか。

日本中のDJI製ドローンが原発の上空を飛行可能になる。

古谷:そうならないよう、高高度だけでなく低高度においても制空権を確保する手段を講じるべきなのです。

外国製水中ドローンが海上自衛隊の基地封鎖も

 さらに、自律型ロボットによる脅威は海にも迫ります。水中ドローンも自律性能を高める方向にあります。

 日本の海中防衛は水深300mより深い海域においては機能しているものの、同0~300mにおいては脆弱です。このため、例えば中国が、本格的な攻撃を仕掛ける前に、水中ドローンを使って日本の主要港湾を閉鎖することが考えられます。漁船を装った船舶が水中ドローンを発出して海底ケーブルを切断する事態も想定しなければなりません。無人艇が近づき、海上自衛隊の基地を封鎖することもあり得る。

 ちなみに日本国内で利用されている民生水中ドローンはほぼすべて中国製です。

ドローン開発競争の核は中国と中東

ドローンをめぐる世界の開発競争は今どのような状況にあるのでしょう。

古谷:欧米と中ロの対立とは異なる軸で、国際的な競争が展開しています。

 最も存在感を示しているのは、先ほど触れたトルコです。防衛用ドローンはトルコの国家産業になっていると言っても過言ではありません。開発・製造を担うバイカルをトルコ政府が全面バックアップしています。さらに、同社を率いるバイラクタル氏はエルドアン大統領の娘婿に収まりました。