ロシアによるウクライナ侵攻が収束せず、資源高を起点とする景気失速が懸念される。円安も急速に進行し、この恐れを拡大させている。だが、大和総研の神田慶司・日本経済調査課長は2%超の経済成長を見込む。新型コロナウイルス禍からの反動があった2021年を上回る値だ。なぜ、それだけの成長が可能なのか。大和総研経済調査部で日本経済調査課長を務める神田慶司氏に聞いた。
(聞き手:森 永輔)

ロシアによるウクライナ侵攻が世界経済に大きなダメージを与えるとの懸念が高まっています。神田さんのチームのこのほど、この侵攻を踏まえた日本経済の展望を発表されました。
神田慶司・大和総研経済調査部日本経済調査課長(以下、神田氏):2022年の実質GDP(国内総生産)成長率を①楽観、②ベース、③悲観の3つのシナリオに分けて推定しました。②のベースシナリオでは2.7%成長、①の楽観シナリオでは3.1%成長、③の悲観シナリオでは2.1%成長と見込んでいます。

え、悲観シナリオでも2.1%ですか。これは高い数字ですね。過去5年間の実質GDP成長率の推移は17年から1.7%、0.6%、マイナス0.2%、マイナス4.5%、1.6%。20年に新型コロナ禍の影響で大きく落ち込んだ後、その反動があった21年でさえ1.6%成長にとどまりました。
しかも今年は、ウクライナ危機に端を発するエネルギー資源価格の高騰と、現在進行形の円安が景気の足を引っ張ることが懸念されています。
神田氏:おっしゃる通りです。22年の予測はエネルギー資源高が消費に及ぼす影響をどのように見込むかが最も大きなポイントになります。我々は、これまでの資源高と今回の資源高では日本が置かれた状況が異なると考えました。
日本の家計が抱える過剰貯蓄は60兆円
今の家計は、コロナ禍の下で消費を抑えて貯蓄が増加したため、資源高に対して高い耐久力を保持しています。数字で示すと、新型コロナが拡大し始めた20年1月から22年3月までに約60兆円の過剰貯蓄を備えることになりました。このため、資源高が他の商品に波及し物価が上がっても消費を大幅に切り詰めることはないと考えます。
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