プーチン大統領は停戦に応じるだろうか。ウクライナに中立と非軍事化を求める。当然のこととして、親ロシア派が東部ドンバスで支配する地域の独立承認も求めるだろう。これは、1951年のサンフランシスコ講和会議で参加国に求めたこととそのまま重なる。すなわち、停戦後のウクライナを待っているのは、領土の割譲、分割、中立化、非軍事化だ。兼原信克・元国家安全保障局次長に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

サンフランシスコ講和条約に署名する吉田茂首相(当時)(写真:近現代PL/アフロ)
サンフランシスコ講和条約に署名する吉田茂首相(当時)(写真:近現代PL/アフロ)

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化の様相を強めてきました。

兼原信克(かねはら・のぶかつ)
兼原信克(かねはら・のぶかつ)
同志社大学特別客員教授。1959年生まれ。1981年に東京大学法学部を卒業し、外務省に入省。内閣官房内閣情報調査室次長、外務省国際法局長などを歴任した後、2014~2019年に内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長。著書に『戦略外交原論』『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』『核兵器について、本音で話そう』などがある。(写真:加藤 康)

兼原信克・元国家安全保障局次長(以下、兼原):ウクライナの首都キエフ包囲を始めてからのロシア軍の動きは精彩を欠いています。準備不足の感が否めません。それまでは「ロシア軍らしい」行動を取っていましたが。

 ロシアやベラルーシとの国境からキエフに至るウクライナ北部は湿地帯です。いったん入ると抜けるのは困難。さらにウクライナ軍が、ロシア軍のキエフ侵攻を必死で食い止めています。キエフに入れないロシア軍は湿地帯に展開するわけにもいかず、道路の上で一直線になってぶざまに立ち往生する羽目に陥りました。そのロシア軍を、ウクライナ軍が横から攻撃している状態です。

ロシア軍の被害は拡大しており、死者が7000人に達したと報じられています。

兼原:ロシア軍は戦力を北と南に分散させており、侵攻軸が複数になっています。ウクライナ軍に対して圧倒的な侵略勢力というわけではないので、素人っぽい行動を取っている印象を持ちます。FSB(連邦保安局、KGB*の後身)のいい加減な情報に唆されて、軽い気持ちで軍を進めたのではないでしょうか。東ウクライナはロシアにシンパシーを持つ人が多かったので、「ロシア軍がウクライナに進めば、東ウクライナは歓迎するはずですよ」とか。

*:ソ連時代の秘密警察。国家保安委員会。治安維持活動や対外諜報活動を行った

 ウラジーミル・プーチン大統領は2000年に大統領に就任して以来22年間、独裁者の地位にあります。周りはお追従を言う人ばかり。都合のいい情報しか入ってこなくなっている恐れがあります。この意味で、長期に権力を維持した老いた独裁者の末路と言えるでしょう。

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