
習近平政権の3期目がスタートを切った。米中関係に詳しい、日本総合研究所の呉軍華上席理事はその人事に注目する。4つある副首相ポストのうち2つを、軍需関連産業の関係の深い人物が占めた。キーワードは「中国式現代化」。米中対立をこれまでより1段激化させるという。それはなぜか。
(聞き手:森 永輔)
中国で3月13日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が閉幕し、習近平(シー・ジンピン)政権の3期目がスタートしました。同政権の展望について伺います。全人代閉幕後の恒例となっている国家主席演説を追うと、新たなミッションを設定することはありませんでした。習政権は従来路線を継続する意向でしょうか。
呉軍華・日本総合研究所上席理事(以下、呉氏):確かに新機軸は打ち出しませんでした。党大会で決めたことを政府レベルに落とすことがそもそも全人代の主たる役目ですから。けれども、2つの点について指摘したいと思います。1つは、人事を見ると、様々な政策を推進する中心として軍需関連産業が力を持つと予想されること。もう1つは、「中国式現代化」を国家レベルのアジェンダとして正式に打ち出したことです。

まず、人事について。国務院(政府)における4つの副首相ポストのうち2つを軍需関連産業の出身者が占めました。1人は張国清氏。軍事分野で有名な中国北方工業に就職し、会長まで務めました。同社は現在、中国最大の武器輸出企業である中国兵器工業集団に合併されています。
もう1人は劉国中氏。この人物は華東工程学院砲弾学部雷管設計製造学科で学び、軍需関連産業の一角を占めるハルビン建成機械工場に勤務した経験を持ちます。1990年、黒竜江省人民政府に転じました。
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