失業給付の手続きのため列をなす米市民。それでも人手不足が起こる理由とは(写真:ロイター/アフロ)
失業給付の手続きのため列をなす米市民。それでも人手不足が起こる理由とは(写真:ロイター/アフロ)

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストに、米経済が日本経済に与える影響について聞く。米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の継続を打ち出しており、米国の3万ドル相場は当面続く。この構造は日本の3万円相場にも当てはまる。1.9兆ドル(約200兆円)の米コロナ対策は、当面は需要を拡大させる。しかし、いずれ反動減が訪れる。そのとき日本が新型コロナに対する集団免疫を獲得できていなければ、日本にとって内外の需要が同時に縮小することになる。米コロナ対策はインフレも助長する。予想される3つの波の影響は円安にとどまるだろうか。

(聞き手:森 永輔)

(「コロナ経済、2021年前半は『BS好況』、後半は『財政の崖』で失速も」も併せてお読みください)

株式の「3万円相場」の今後をどのように展望しますか。日経平均は2月半ば、30年ぶりに3万円台を回復しました。2月最終週の後半こそ反落しましたが、3万円近くを維持しています。

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト(以下、小林):若干、スピード違反の観があります。

 米国のダウ工業株30種平均も2月に入って3万1000ドル台に乗りました。私は、米国株に関しては強いバブル感は覚えていません。企業の業績をある程度適正に反映した相場だと思います。これに対して、日本企業の業績は米企業ほどには回復していません。

<span class="fontBold">小林俊介(こばやし・しゅんすけ)</span><br />みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト<br />専門は日本経済・世界経済・金融市場分析。2007年、東京大学経済学部を卒業し、大和総研に入社。2013年に米コロンビア大学および英ロンドンスクールオブエコノミクスで修士号を取得。日本経済・世界経済担当シニアエコノミストを経て、2020年8月より現職。(写真:加藤 康)
小林俊介(こばやし・しゅんすけ)
みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト
専門は日本経済・世界経済・金融市場分析。2007年、東京大学経済学部を卒業し、大和総研に入社。2013年に米コロンビア大学および英ロンドンスクールオブエコノミクスで修士号を取得。日本経済・世界経済担当シニアエコノミストを経て、2020年8月より現職。(写真:加藤 康)

 ただし、日米ともに当面の株式相場については楽観視しています。2020年3月以降、ゲームが変わったからです。FRBが量的緩和の一環でCP(コマーシャルペーパー)や社債を購入するようになりました。これは株価を含め広範なリスク資産の価格にフロアー(下限)を設定するのと事実上同じ意味を持ちます。

 中央銀行はこれまで、金利を上げ下げすることで景気をコントロールしてきました。しかし、金利を下げる余地はすでになくなり、ゼロ金利制約に直面しています。この環境下で、需給ギャップをプラスに転じさせ、景気を回復させるには、株高を誘導し、その資産効果に期待するしかありません。日米の中央銀行はその手段として、「リスクプレミアムへの働きかけ」を選択しました。

 企業が資金調達する場合の金利を考えてみましょう。最も低いのはリスクフリーレート(編集部注:RFR、非常に信用力が強くリスクがほとんどない主体が発行する債権の金利や利回り。国債の利回りや、金融機関同士が短期資金をやりとりする「無担保コールオーバーナイト物金利」などを指す)ですね。社債の金利には、リスクフリーレートにクレジットスプレッドが上乗せされます。株式には、この上にさらにリスクプレミアムが上乗せされる。

 各国の中央銀行は政策金利の引き下げや国債の購入を通じてリスクフリーレートを極限まで下げました。しかし、景気は回復しない。このため、クレジットスプレッドやリスクプレミアムを縮小させる試みを始めたわけです。日銀はETF(上場投資信託) を買い入れることで、リスクプレミアムを下げる取り組みを続けてきました(編集部注:日銀が事実上、株式を購入している)。

続きを読む 2/4 株高のカギ、1.9兆ドル財政出動の効果とFRB議長人事

この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。