NATOが警戒するポーランド・バルト3国間の国境封鎖

第2のシナリオはどのようなものですか。

長島:ロシアが、戦略的要衝と位置付けられるスバルキ・ギャップ(Suwalki Gap)*をコントロール下に置くシナリオです。NATO諸国にとっては、こちらの方がより重大な問題となります。NATOの結束がかかるからです。NATOが現在展開している部隊の配置を見ると、北方つまりスバルキ・ギャップを意識した布陣になっていることが分かります。

*:「ギャップ」は回廊、補給路の意味

 特に、バルト3国などに展開されるNATOバトルグループや各加盟国からの増援部隊は、NATOが緊急展開部隊(NRF)を派遣するための「引き金(トリップワイヤ)」としての役割を果たすほか、非常時において国内の治安維持や避難民対応の責任を担うものです。

スバルキ・ギャップは、北に位置するリトアニアと南に位置するポーランドを隔てる国境線で、その距離は東西方向に100kmほど。その西端はロシアの飛び地であるカリーニングラード。東端は、ロシアの友好国ベラルーシの西端に当たります。世界の安全保障のフロントラインは、冷戦時代のドイツ・ベルリンからスバルキ・ギャップに移動したとの見方があります。

長島:ロシアがこのスバルキ・ギャップを支配下に収めれば、ポーランドとバルト3国*との間の狭隘(きょうあい)な連絡路が遮断され、バルト3国が孤立することになりかねません。兵器も人員もバルト3国に送ることができなくなる。NATOとしては後方支援面でも手の出しようがなくなってしまうのです。

*:リトアニアの北にはラトビア、さらに北にはエストニアがある。

冷戦期にNATOが重視したフルダ・ギャップ(東ドイツ=当時=と西ドイツ=同=結ぶ回廊)の21世紀版というわけですね。NATOはワルシャワ条約機構軍の戦車がこの回廊を通って西ドイツに侵入し、わずかの期間でフランクフルトを占領するシナリオを恐れていました。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2881文字 / 全文7983文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。