「主権」を守るため自律性と不可欠性を維持・強化する

サプライチェーンのチョークポイントを握られれば、その勢力に逆らえなくなる。チョークポイントとなりかねない要素で重要性を増しているのがデータ。DXの進展はデータをめぐる危機を高める。そんな時代に、政策の視点から重視すべきはどんな点ですか。

甘利:経済安全保障政策は「主権」を守る取り組みだということです。我が国の独立と生存および繁栄を経済面から確保する。武力を行使しなくても国を崩壊させることができます。ミサイルを撃たなくても、医療用マスクの供給を止め、医療崩壊を起こさせれば、その国は崩壊するのですから。

 そのような事態に陥らないため「自律性」と「不可欠性」を維持・強化することが必要です。

 自律性の維持・強化とは、戦略物資において先ほど触れたチョークポイントを洗い出し、それを解消することです。リスクのある国に依存していないかをチェックする。代替品を探す。国内生産を促す。備蓄を進める。こうした措置を講じて依存度を下げるのです。

 ここでいう戦略物資はハイテク機器ばかりではありません。医療用のマスクや手袋、ガウンなどエッセンシャルワーカーが必要とするものも含みます。このことを、我々は新型コロナ禍を過ごす中で痛感してきました。

 他方、不可欠性とは、諸外国にとってのチョークポイントを我が国が握り、その国々にとって欠くことのできない存在になることです。残念なことに我が国はレアアースをはじめとする資源に恵まれていません。よって、世の中の動きを先回りして機微な技術を特定し、発明を促し、技術を高め、それを不可欠なものとする必要があります。

自律性を損ないかねないチョークポイントがどこにあるのか。どの技術分野で不可欠性を育てるのか。この見極めが大事になりますね。ヒトも予算も限られている現状で、この目利きをいかにして実行しますか。

甘利:各省庁が、それぞれが担当する産品やサービスについて、そのサプライチェーンを精査し、もし何かの供給が途絶えたらどうなるか、不測の事態が起きたらどうなるか、シミュレーションをしていくのです。

 同様のことを、戦略物資はもちろん基幹インフラについても実施しなければなりません。通信、電力を含むエネルギー、交通、食料、医療、金融、物流、放送――。

 これは膨大な作業になります。しかし、やることは決まっています。これを実行できるよう、経済安全保障推進法(仮称)の成立を目指します。

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