日米関係、原則なきトランプ大統領を安倍首相リード
トランプ大統領の外交政策について個別にうかがいます。この4年間の日米関係をどう評価しますか。
久保:トランプ外交は同盟国を重視することがありませんでした。それどころか、同盟国に対しても鉄鋼やアルミを対象とする追加関税を課すことさえした。米国との間に貿易黒字を抱えるか否かが、同盟国であるか否かより重要だったのです。
この意味では、日本はもっとたたかれても仕方ない状況にあったと言えます。しかし、首脳同士が強固な信頼関係を構築。通商摩擦において恐れていたほどの悪影響を受けずに済みました。
中曽根康弘首相(当時)とロナルド・レーガン大統領(同)、小泉純一郎首相(同)とジョージ・W・ブッシュ大統領も良好な関係にありました。これらの関係と、安倍晋三首相(同)とトランプ大統領の関係を比べるとどうでしょう。
久保:政策の内容よりも人間関係を重視する傾向は、より強かったかもしれません。外交の原則も知識も備えていない政治家は、人間関係で外交を判断する傾向が強くなるように思います。
例えば、トランプ大統領は最後まで日米同盟が持つ複雑な構造を理解していなかったと思います。それが日本を不安にさせていましたが、安倍首相が粘り強く説明することで大事に至ることなく済みました。
トランプ大統領は日米安保条約について「不公平だ。米国は日本を守る義務があるのに、日本が米国を守る義務はない」という趣旨の発言を繰り返していました。日本は米国を守る義務はありませんが、基地を提供する義務を負っています。この基地があるからこそ、米軍はアジア地域ほぼ全域で展開することができる。朝鮮半島の防衛にも不可欠ですし、南シナ海やインド洋へと延びるシーレーンを確保することもできます。これが同条約第6条の持つ意味ですね。トランプ大統領はこれを理解することがありませんでした。
それゆえ日本は常に不安を感じざるを得なかった。ただでさえ、トランプ外交は不安定です。先ほど、中国の習近平国家主席に再選支持を要請した話をしました。そのことからも「1950年6月25日の恐怖」を拭い去ることはできませんでした。この日は、北朝鮮が韓国に侵攻し、朝鮮戦争が勃発した日です。トルーマン大統領(当時)は韓国防衛を即座に決断しました。尖閣諸島で同様の事態が起きたときに、トランプ大統領は同じ決断をするのか。決して安心することはできませんでした。
トランプ大統領が側近との会話で「日米同盟の破棄」に言及した、との報道がなされたことさえもありましたし。
安倍首相の首脳外交を評価すべきでしょうか。
久保:トランプ大統領と良い関係を築くことができたのは、たまたまかもしれませんが、評価できるでしょう。
安倍首相はオバマ大統領とも良い関係を築いていました。
オバマ大統領の広島訪問も実現させましたね。
久保:かつて英国のトニー・ブレア首相(当時)が、米国のビル・クリントン大統領(同)ともジョージ・W・ブッシュ大統領とも良好な関係を築いて評価されました。安倍首相についても同様のことが言えると思います。
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