2021年度の防衛予算は中国が約3242億ドルであるのに対して日本は約530億ドル。6倍を超える開きがあります。
中林氏:さらに、日本の周辺にはロシアも北朝鮮もあります。日本だけで太刀打ちできるものではありません。したがって、米国をはじめとする民主主義国・同志国との連携が欠かせません。そして、ポイントの2で述べたように、米国も日本をはじめとする同盟国の協力を必要としています。
ポイント1とポイント2のベクトルを伸ばしていった交点に統合抑止があります。例えば、陸・海・空の自衛隊を束ねる統合司令部の創設は、統合抑止に向けた動きの典型例と言えるでしょう。米軍との連携をしやすくする取り組みです。
日本が自ら率先して変化し、米国を動かした
日米の変化について、日米首脳会談後の共同声明より、日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)後の共同発表の方が明確かつ具体的に書いています。2プラス2は、首脳会談に先立って1月7日に開かれました。2プラス2共同発表が非常に重要な意味を持っていると考えられます。過去にも、2005年の日米2プラス2の後に署名された「日米同盟:未来のための変革と再編」が「日米安全保障条約に取って代わった」と評価されたことがありました。
中林氏:確かに、2プラス2での合意文書が重要な意味を持つことがあります。
ご指摘のように、1月7日の日米2プラス2はとても重要なものでした。ただし、これと13日の首脳会談はセットで捉えるべきです。2プラス2で話し合われた内容を、首脳同士が承認したことが大事です。
その意味で言うと、今回の首脳会談と日米2プラス2も、それだけで評価することはできないですね。過去からの積み重ねを集大成したものとの観があります。 バイデン政権が2021年1月に発足するとすぐ、日米政府は3月に2プラス2を開催しました。そのときの共同発表に「一層深刻化する地域の安全保障環境を認識し、閣僚は、日米同盟の役割・任務・能力について協議することによって、安全保障政策を整合させ、全ての領域を横断する防衛協力を深化させ、そして、拡大抑止を強化するため緊密な連携を向上させることに改めてコミットした」と盛り込みました。 その後、米国が国家安全保障戦略と国家防衛戦略を改定。日本は国家安全保障戦略を改定すると共に、国家防衛戦略を新規に策定しました。そして、今回の日米2プラス2で、両国の安全保障・防衛政策は「軌を一にしている」と承認しました。宣言した、両国の政策を「整合させ」たわけです。 そして、整合した政策の一環として米国は、在沖縄の海兵隊「第12海兵連隊」を「第12海兵沿岸連隊」に改組し、第1列島線*を守る体制を強化する方針を今回の2プラス2で打ち出しました。これは「拡大抑止を強化」につながります。「日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間の協力」を深化させることも同様です。 宣言したことを着々と実現している印象を受けます。
中林氏:その通りです。さらに言えば、10年以上前から日本が警鐘を鳴らしてきた中国の脅威について、ようやく米国が理解し、政策のかじを切ったと考えることもできます。日本は中国と至近の距離にあるため、その脅威を米国よりずっと早く、そして強く感じてきました。
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