
岸田首相とバイデン米大統領が1月13日、首脳会談に臨んだ。早稲田大学の中林美恵子教授は「日本が示した安全保障政策の転換は戦後最大」と評価する。そのポイントは「自分の国は自分で守る」こと。日米はこの先に、統合抑止の実現を描く。
(聞き手:森 永輔)
岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領が1月13日、ホワイトハウスで首脳会談を行いました。今回の会談をどう評価しますか。
中林美恵子・早稲田大学教授(以下、中林氏):これからお話しする3つの意味で重要な会談だったと思います。第1のポイントは、日本の安全保障政策が大きく変わりつつあることを示したこと。第2は米国の大きな変化を示していること。そして第3は、5月に予定される主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)への道筋をつけたことです。

吉田ドクトリンから脱却する戦後最大の変化
第1について、この変化の大きさは戦後最大と言っても過言ではありません。大きく捉えれば、これまでの安保政策は吉田ドクトリン*を継承するものでした。日本が攻撃を受けたときには「米国が守ってくれる」「米国が攻撃してくれる」という考えが根底にありました。盾と矛の役割で言えば、日本は盾の役割だけを担う。米国の軍事力に頼ってきたわけです。
これが「自分の国は自分で守る」に変わりました。この変化を後押ししたのは、ロシアによるウクライナ侵攻です。ロシアが隣国を侵略。同じく強権国家である中国も同様の行為に及びかねない。すなわち、日本の周辺でウクライナ侵攻のようなことが起こりかねない。仮にそうなったら、ウクライナのように、自分の国は自分で守るべきだ。そうしなければ、どこの国も助けてくれない――。日本の国民の間でこうした理解が進みました。岸田政権はこの機を捉え転換を明確にしました。
それが顕著に表れているのは防衛費の増額です。2027年度にGDP(国内総生産)比2%にする方針を打ち出し、2023年度予算案で過去最大の約6兆8000億円を盛り込みました。加えて、反撃能力やアクティブ・サイバー・ディフェンス(積極的サイバー防衛)の導入も、この変化の一環です。
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