共和党の牙城・ジョージア州が変わった

決選投票は、2議席とも大接戦となりました。ラファエル・ウォーノック氏(民主党)とケリー・レフラー氏(共和党)の争いは、ウォーノック氏が当選を確実にしたものの、得票率は50.8%対49.2%と僅差でした(日本時間午後3時現在。開票率98%)。ジョン・オソフ氏(民主党)とデビッド・パーデュー氏(共和党)の戦いは、50.40%対49.60%(同、同98%時点)とさらなる接戦を制して、オソフ氏が当選を確実にしました。

 このような激しい接戦になった背景に何があるのでしょう。

前嶋:次に挙げる4つの現象が順に作用して今回の接戦を導いたと分析しています。

 第1は注目度の高さです。先ほどお話ししたように、ジョージア州決選投票の行方がバイデン政権の今後を左右します。このため、注目度が高まり、それが投票率を押し上げました。期日前投票が、昨年11月の大統領選と同じ300万票に達したと報道されています。このうち郵便投票が200万票を占めるもようです。

 投票率の上昇は、第2の現象として民主党の得票を押し上げました。ジョージア州は共和党の地盤で、基本的には「共和党有利」の州です。しかし、新型コロナ禍の中で郵便投票が広まったため、従来なら火曜日に投票に行くことができなかった低所得層も、事前に郵便で投票するようになりました。こうした層には民主党支持者が多くいます。

 第3は人口動態の大きな変化です。ヒスパニック系とアジア系の住民が大量に流入してきました。第2の現象が起こるベースとなる現象です。

 それと同時にアフリカ系の住民が結束を強めました。「アフリカ系住民の投票を州政府が妨害しようとしている」との世論が高まったからです。投票する人の写真照合を厳格化したり、投票所の数を減らしたりしたことが、こうした見方を生みました。これがアトランタ、メイコン、サバンナといった都市部での民主党票拡大につながったのです。

当選確実を決めた民主党候補の地域別得票率を見ると、いま言及された3都市を中心とする都市部に集中しています。

 アフリカ系住民の結束には、やはりブラック・ライブズ・マター(BLM)の問題が影響したのでしょうか。

前嶋:それもありますが、それ以上にジョージア州の特性が大きいと思います。現在のブライアン・ケンプ知事の行動が、先ほどお話ししたように、投票妨害との見方を招いています。アフリカ系住民は同氏を差別主義者とみなしています。

 結束の強化には、2018年の同州知事選挙で、ケンプ氏と争った、民主党のステイシー・エイブラムス氏の存在も大きいでしょう。エイブラムス氏はアフリカ系の女性で、「選挙権が抑圧されている」と強く訴えてきました。同氏の動きがアフリカ系の結束をうながしたのです。

 BLMはエイブラムス氏らの行動を下支えする位置づけにあるのかもしれません。くしくも1月5日、米ウィスコンシン州ケノーシャで白人の警官がアフリカ系男性を銃撃した事件をめぐって、この警官を起訴しないとの表決がありました。これもアフリカ系住民の団結に影響しているかもしれません。

 選挙妨害に話を戻すと、昨年11月の大統領選に関するトランプ大統領の不適切発言も影響したとみられます。ジョージア州で選挙をつかさどる州務長官に「選挙結果を覆すよう強要した」とされる発言です。民主党支持者は「トランプ大統領が選挙結果をつぶそうとしている」との見方を強めています。これが反トランプ票となり、今回の決選投票で民主党候補に向かったと考えられます。

次ページ トランプ大統領の政治生命断ちかねない議