前嶋:そうです。例えば、バイデン政権が太陽光発電の整備に予算を付けようとすれば、共和党は「ソリンドラを忘れたのか」と反対したでしょう。同社は太陽光パネルのメーカー。クリーン技術を中心に米国経済を立て直すべくオバマ政権が支援し、米エネルギー省が融資保証を提供していましたが、2011年に破綻してしまいました。

主要閣僚などの人事も影響が懸念されましたね。

前嶋:行政管理予算局(OMB)局長に指名されているニーラ・タンデン氏の就任が難しくなるとみられていました。同氏は左派の性格が強く、共和党上院のミッチ・マコネル院内総務は「絶対に許さない」という趣旨の発言をしていましたから。

 国防長官に指名されている、ロイド・オースティン元陸軍大将の就任も難航したかもしれません。同氏はロジスティクスなど事務面にたけた人物で、新型コロナワクチンの普及に貢献することが期待されています。バイデン氏は、共和党も受け入れやすい人物を選んだとみられます。

 それでも共和党は「文民統制が形骸化する」との理由で反対する可能性がありました。米国の国家安全保障法は、退役後7年未満の軍人が国防長官に就任することを禁止しています。オースティン氏が退役したのは2016年でこの規定を満たしていないため、バイデン氏はこの規定の免除を要請しています。

実は、トランプ大統領によるジム・マティス氏の国防長官指名も、この免除を得て実現しました。「それとこれとは別の話」となりかねなかったわけですね。

激しい疑似妨害の懸念は残る

民主党が2議席を獲得し上院のコントロールを握っても、フィリバスターの問題が残りませんか。フィリバスターは合法的議事妨害。かつては長時間の演説を行って審議時間を消費し法案を採決させない、などの行為を指していましたが、いまは演説をしなくても手続きさえ行えば、少数派(党)が多数派(党)の進めたい法案をいつでも止めることができます。これを防ぐためには、与党が60以上の賛成票を確保し、「クローチャー(討議終結)」を採択する必要があります。

前嶋:おっしゃるとおりです。予算調整措置ですむ一部の政策を除き、多くの法案がフィリバスターの対象となります。民主党がトリプルブルーを実現し分割政府を回避できても、上院の議席数が60に満たない以上、バイデン政権はこれに悩まされることになります。

 オバマ政権の最初の2年間のようにはいきません。オバマ政権は発足当時、上院で58議席を手にしました(バーニー・サンダース氏など民主党系無所属議員を含む)。60議席には達しませんでしたが、共和党議員を数人説得すればクローチャーを採択することができたのです。バイデン政権がクローチャーを採択しようとすれば、10人強の共和党議員を説得しなければなりません。

 それでも、民主党がジョージア州で2議席を得て、実質的な多数派となる利益が大きいのは先ほどご説明したとおりです。現実には、共和党がフィリバスターを行使するのは、両党が対立する大きな法案に限られるでしょうから。

 人事における障害も小さくなっています。幾度かのルール変更で、単純過半数(51票)で承認できる職が増えたからです。例えば、2015年に当時多数派だった民主党が主導して、大使などの外交官を単純過半数で承認できるようにしました。トランプ政権は2017年、最高裁判事の人事を、単純過半数で承認できるようルールを改定しています。

これで、ニール・ゴーサッチ氏の人事が承認されました。このルール変更は「核オプション」との異名で呼ばれました。

次ページ 共和党の牙城・ジョージア州が変わった