この「トリプルブルー」という表現自体が分極化を表すものと言えます。かつて、議会は「ブルー」でも「レッド」でもなく、両者が交ざり合う状態でしたから。

 以前は、分割政府の状態でも政治が動いていました。議会における共和党と民主党の争いより、大統領と共和・民主が協力する議会との対立の方が際立っていたのです。例えばニクソン政権時代に環境保護にまつわる法案が数多く成立しています。同政権が環境政策に特別熱心だったわけではありません。議会内で共和党の一部と民主党の一部が協力し、成立させたものでした。

 議会と大統領との対立の方が際立っていたからこそ、「ハネムーン期間」という表現もあったわけです。新大統領が就任して最初の100日間、議会は大統領と対立することなく、協力する姿勢を示すことを意味する言葉です。もはや、ハネムーン期間は死語となりました。

トランプ政権も、同大統領が2017年に就任したときは「トリプルレッド」でした。2018年の中間選挙で下院の多数派を民主党に奪われて以降、「分割政府」状態になりました。

前嶋:トランプ政権は、対中政策など外交面で派手な動きをしたため、いろいろな政策を実現したように見えますが、実態はそうでもありません。例えばオバマケア。トランプ大統領はこれを敵視し廃止を訴えましたが、制度として廃止することはできませんでした。メキシコとの国境の壁も、大型インフラ投資も実現できていません。

 最初の質問に戻ると、バイデン政権が最初から分極化の下での分割政府に陥るか否かが、ジョージア州の決選投票にかかっているため注目を集めたわけです。

看板政策は否決、審議すらされないことも

共和党が上院で過半数を制していたら、バイデン政権の運営にどのような問題が起きていたでしょう。具体的な政策として何が挙がりますか。

前嶋:バイデン氏が提唱する「よりよい再建(Build Back Better)」に関連する法案の審議が滞ったでしょう。

 直近で注目されるのはコロナ対策における個人向け現金給付です。現在、1人当たり600ドルを支給することが決まっています。ただし、これは3月までの時限措置であるため、バイデン政権はこの延長を目指すとみられます。支給額を2000ドルに引き上げることも検討しています。この法案が審議すらされない可能性がありました。

 米議会では、多数党がすべての委員会の委員長職を握ります。委員長は、何をいつ議論するかを決める権限を持っている。よって、共和党が多数派となれば、法案の否決はもちろん、審議すらしないことができました。

 コロナ禍が落ち着いたら、バイデン政権が看板に掲げるクリーンエネルギー関連の政策が俎上(そじょう)に上るでしょう。これは民主党左派が推していることもあり、共和党は強く抵抗したと考えられます。

外交政策にも影響がありましたか。

前嶋:どこまでを「外交」に含めるかで答えは変わります。それでも、予算配分を通じて間接的な影響があったでしょう。

 人権、環境、国際協力に関わる政策に向けられる予算を、共和党が「そんなものは無駄金だ。それより国防費を増額すべきだ」との理由で反対することが考えられました。対中国の軍事費が増額されれば、日本にとってはプラスになったかもしれませんが。

バイデン氏が公約を実現すべくパリ協定に復帰しても、協定が定める義務を履行するための実行策に投じる予算が認められないことがあり得たわけですね。

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