米ジョージア州の上院議員決選投票で当選を確実にしたオソフ氏(左)とワーノック氏(写真:The New York Times/Redux/アフロ)

米ジョージア州で1月5日、議会上院の2議席をめぐる決選投票が実施された。いずれも民主党が激戦を制し、共和党の牙城を突き崩した。この選挙の意義は何か、バイデン次期政権は何を得たのか、トランプ大統領の今後の影響力はいかに。米国政治に詳しい前嶋和弘・上智大学教授に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

米ジョージア州で行われている米上院2議席をめぐる決選投票が注目を集めています。共和党が1議席でも維持すれば同党が上院の過半数を制し、ジョー・バイデン氏が率いることになる民主党政権との間で「ねじれ」が生じるためです。

【解説】
これまでに確定していたのは共和党50議席、民主党48議席(定数は100)。よって、共和党がジョージア州で1議席でも維持すれば過半数を制することができた。だが、民主党が2議席とも獲得したことで共和党50、民主党50議席となる。上院議長となる予定のカマラ・ハリス副大統領(予定)の1票を加えて、民主党が上院のコントロールを握ることができる。

 しかし、大統領が所属する政党と、議会のどちらかの院の多数派が異なるケースはこれまで幾度もありました。今回、特に注目度が高まったのはなぜですか。

前嶋:それは、議会において分極化が強まっているからです。

前嶋和弘(まえしま・かずひろ)
上智大学総合グローバル学部教授。専門は米国の現代政治。中でも選挙、議会、メディアを主な研究対象にし、国内政治と外交の政策形成上の影響を検証している(写真:加藤 康)

 分極化とは、保守である共和党とリベラルである民主党との政策が大きく離れた状態になることです。加えて、共和党の議員同士、あるいは民主党の議員同士が固まる。共和党の議員は、共和党が出した法案には賛成するが、民主党が出した法案には反対します。逆もまたしかり。よって、議会内で話し合い、妥協点をみつけることができず、法案が成立しなくなるのです。

 典型的だったのはオバマ政権です。2008年の大統領選と議会選の結果、「大統領」「上院」「下院」の3つを民主党が制しました。この結果オバマケアやウォール街改革など野心的な法案を可決し、20~30年に一度とも言える改革を実現しました。しかし、2010年の中間選挙で下院の過半数を共和党に奪われ、2014年の中間選挙では上下両院とも共和党にコントロールを明け渡すことになりました。オバマ政権が「何もしなかった」と言われる背景にはこうした議会の事情もありました。

「何もしない政権」の実態は「議会が何もさせない政権」でもあったのですね。

前嶋:分極化の中で、分割政府になってしまったのです。

 米国では、「大統領」を出した党と、「上院」と「下院」のどちらか一方でも、その多数党とが異なる状態を「分割政府(divided government)」と呼びます。

「分極化」の中で動けない「分割政府」

今回のジョージア州の決選投票をめぐって、「民主党は『トリプルブルー』を取れるか」という表現がなされました。「大統領」「上院」「下院」の3つを民主党が制する状態です。このトリプルブルー、もしくはトリプルレッド(編集部注:レッドは共和党を指す)以外の状況は分割政府となるわけですね。

前嶋:おっしゃる通りです。

続きを読む 2/5 看板政策は否決、審議すらされないことも

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