全4104文字
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 いち早く新型コロナウイルスの感染拡大の第1波を乗り越えた中国社会は平穏な日常を取り戻しつつあることは前回報告した通りだ。一方で中国国外に目を転じると、広域経済圏構想「一帯一路」などを足がかりに「中華民族の偉大な復興」を成し遂げるという「中国の夢」の実現に黄信号が灯っている。高揚する国内のナショナリズムに後押しされた中国の居丈高な外交路線が、世界中から反感を買う。その強硬な姿勢は「マスク外交」を通じて各国に医療支援しているときも変わらなかった。奇妙な政治理論に支配された一党独裁体制の限界が露呈した。

 今春、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ各国の空港に、中国から医療用マスクや防護服などの医療物資が続々と届けられた。

 取材陣が待ち構える中、チャーター機のタラップから降りてきた医療チームを、現地の要人らが拍手で出迎える。その次は横断幕を掲げながらの記念撮影だ。中国を象徴する赤地の横断幕に「ともに乗り越えよう」などとスローガンが書かれているところは、いかにも中国らしい。

 耳目を集めようと大々的に執り行われる式典は、これがただの医療支援事業ではないことを物語る。西側諸国はプロパガンダ(政治宣伝)を目的とする、「マスク外交」だとみなす。

カンボジアに到着した中国の医療チーム。中国は世界規模で「マスク外交」を展開する(写真:AFP/アフロ)

習氏が抱く勢力圏拡大の野望

 中国当局が初期対応を誤ったために武漢市で感染が拡大した新型コロナは世界中に拡散した。中国に付いてしまったそんなマイナスのイメージを、「世界に手を差し伸べる責任ある大国」というプラスのイメージに転換するのが狙いだ。

 中国が重点的に支援したイタリア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカといった国々を眺めると、ある共通点が浮かび上がる。その多くは「一帯一路」の参加国である。

 一帯一路は中国の習近平・国家主席が2013年に打ち出した広域経済圏構想だ。中国から中央アジアを通って欧州に至る陸路の「一帯」と、海路で東南アジア、インド、東アフリカ、中東、欧州に至る「一路」からなる。沿線国に資金を貸し付けて道路や港湾、鉄道、ダムなどのインフラを整備。人と物の交流を促進して親中の経済圏を構築するという壮大な計画だ。

 中国は一帯一路に未参加のフランスやオランダ、スペインなどにも医療支援の手を差し伸べており、「責任ある大国」との好印象を与えることで、参加に向けた下地作りを進めているようにも見える。中国が医療支援した国は全部で150にも及んだ。一帯一路を通じて中国の勢力圏を拡大し、米国を凌駕する超大国としての地位を獲得するという野望が透ける。

 ただ一帯一路は計画通りに進んでいるわけではない。