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 コロナ禍で注文が急増している製品がある。島津製作所が4月20日に発売した、PCR検査の試薬キットだ。これまでのPCR検査は、通常3時間以上かかるが、同社の試薬キットを使えば、検査時間を1時間程度にまで短縮できる。「アンプダイレクト」という独自の技術を活用して、時短を実現した。

 1つのキットで100検体分の検査ができ、価格は22万5000円(税抜)。当初は月間10万検体分の生産を予定していたが、需要が急増したこともあり、5月下旬には月間30万検体分の販売を見込めるまでになった。

島津製作所は、アンプダイレクトという技術を活用して、検査時間を短縮することに成功した

 島津製作所がPCR検査用の試薬を発売したのは1997年のことだ。その後、2006~07年のノロウイルスの流行時に8000キット分の試薬が売れるなど、一時的に需要が高まったことはあったが、それ以外はほとんど売れず、長らく日の目を見ない製品だった。「1年間の売り上げが1000万円に満たないときもあり、新規開発を中止しようという話が持ち上がったこともあった」(同社広報)ほどだ。

 なぜもうからない試薬の開発を20年以上も続けていたのか。その理由を探ると、一見非効率な開発体制が、同社の成長の源泉になっていることに気づく。

ノロウイルスで一度ヒットも、低迷

 分析機器やX線装置などハードウエアを主力製品とする島津製作所が、試薬の開発を始めたのは1990年代初頭のことだった。PCR検査に詳しい研究者が中途入社してきたことがきっかけだった。他社との差別化を図るため、目をつけたのが、検査時間を短縮する技術だ。

 多くのPCR検査は、鼻や喉などから採取した検体から、まずDNAやRNAを抽出する必要がある。検体中には、検査を阻害する物質が含まれているからだ。島津製作所は、DNAやRNAを抽出せずにそのまま検査できる「アンプダイレクト」という技術を確立し、検査時間を短縮した。

 だが、発売後しばらくは「鳴かず飛ばずだった」(分析計測事業部遺伝子解析グループの二宮健二氏)。転機となったのは、2006年のノロウイルスの流行だ。