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 7月上旬の週末、東京都内にある「業務スーパー」の店舗を訪れた。段ボールケースに入ったままの缶詰や瓶詰、パッケージ商品などが所狭しと並び、多くの来店客が狭い通路で他の客とぶつかりそうになりながら買い物をしていた。

 「杏仁豆腐1キロ」185円、「京風だし巻」137円、「トリノで作ったトマトパスタソース680グラム」238円、「イタリア直輸入のティラミス」248円――。ほとんどの来店客が買い物かごいっぱいに商品を入れ、大量に買い込んでいく。決め手は価格。他のスーパーに比べて平均で「大手に比べて2~3割程度安い」(業務スーパー担当者)ことが顧客を引き付けている。

世界の菓子や食材が手ごろな価格で買える「業務スーパー」(写真:菅野勝男、以下同じ)

 全国に900店舗近い数の「業務スーパー」を展開するのが、食品スーパー業界で成長著しい神戸物産だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた在宅時間の増加により、食品スーパーは軒並み好調だったが、業務スーパーの勢いはひときわ目立つ。

 日本スーパーマーケット協会など食品スーパー業界3団体が発表した3月の全国食品スーパー売上高(速報値、既存店ベース)が前年同月比7.4%増だった。それに対し、神戸物産は売上高が同33.7%増で、営業利益も40.0%増えた。時価総額も今年3月末までの1年間で倍増した。7月3日時点でローソンや日本マクドナルドホールディングスを上回る8426億円だ。

 強さの秘訣が、神戸物産独自の製販一体体制だ。小売業を営みながら、国内で菓子や総菜などの22工場を抱える製造業でもあり、海外約40カ国から商品を自ら輸入する商社機能も併せ持つ。同社では、これらの自社製造拠点や自前の輸入ルートによる独自商品をプライベート(PB)商品と呼び、その比率は販売商品全体の3割に上る。

自前や委託の養鶏場から自社加工工場まで

 多くの小売業では、PB商品というとメーカーに生産委託しているものがほとんどだ。製販の分業こそが効率を高めるとの考えから、製造を他社に任せ、販売に徹する企業がほとんどだからだ。だが、神戸物産はそうした機能までも自社内で抱えることで、むしろ他社以上の高効率経営を実現し、価格競争力につなげているのがユニークな点だ。

 例えば、人気商品の「若どりもも2kg」。一般的な食品スーパーであれば、鶏を処理してから、物流会社を経て、店頭に並ぶまで、複数の工程で他社の力を借りる必要がある。