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新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く封じ込め、世界の模範とされたニュージーランドが景気悪化にもがいている。感染は抑えても一体化した世界経済の下では、その収縮の影響から逃れることができないからだ。新型コロナは、リーマン・ショック後に力を弱めた世界経済にさらに一撃を加えた。さらにグローバル化の姿を変え、一段と低価格化、格差拡大をもたらそうとしている。資本主義の在り方自体も変わりかねない。

ニュージーランドのアーダーン首相は新型コロナに対する「勝利宣言」を出したが、景気低迷は避けられない(写真:Hagen Hopkins / Getty Images)

 「踊り出してしまった」。

 6月8日、新型コロナウイルスの感染者が国内でゼロになったという報告を聞いたニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、こう言って満面の笑顔を見せた。

 同首相は、感染者がゼロだった2月初旬に当時感染の中心だった中国からの入国をいち早く禁止し、3月下旬には都市封鎖(ロックダウン)に踏み切った。その徹底した対策で感染拡大を封じ込めることに成功し、喜びをはじけさせたのだ。新型コロナ対策においては「ニュージーランドモデル」と世界から称賛され、首相のリーダーシップに喝采が送られた。

 ところが、新型コロナを国内から一掃し各種の制限措置を撤廃した2日後、OECD(経済協力開発機構)は同国の今年の実質GDP(国内総生産)成長率が前年比マイナス8.9%に落ちるとの見通しを公表した。主要産業である観光が、世界で実施された移動制限によって大打撃を受けたのが主因だった。1~3月期だけではない。年間を通じて景気は回復しないと予測しての数字である。国内で新型コロナを抑え込んでも、世界経済が動かなければ、景気回復は難しい。

 ニュージーランドだけではない。OECDは新型コロナの感染が年内に収束した場合の20年の世界の成長率をマイナス6%、感染が再拡大した場合はマイナス7.6%に落ち込むと予想する。IMF(国際通貨基金)が6月に改訂した世界全体の成長率は、前回予測(4月)から1.9ポイント落ちてマイナス4.9%と、リーマン・ショック翌年の2009年の同0.1%を大きく下回る見通しとなった。IMFの統計でさかのぼれる1980年以降、世界経済のマイナス成長はこの2回だけ。2020年は1929年の大恐慌時以来という最悪の状況とみられる。

 新型コロナの感染拡大が止まらなければ、IMFは2021年も世界はゼロ成長になると予測する。足元で先進国では、感染者数が減り始めたものの、第2波、3波の懸念が強く残る上に、新興国では感染拡大がなお続いているだけに、その可能性は否定できない。

 もちろん、感染が収束すれば、IMFも21年は5.4%成長に転じるとしており、悲観シナリオばかりを想定することはできない。だが、それで世界経済は何事もなかったかのように元に戻るのだろうか。