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 アルバイトでためた5万円を元手に製品を量産し、アパレルメーカーへの歩みを始めた起業家がいる。バッグブランド「COET」を運営するトキヨプロダクションズ(東京・中野)の中島多恵子社長兼デザイナーだ。2006年にブランドを立ち上げて以来、「1人メイカー」としてバッグを作り続けてきた。

 COETのバッグは、装飾のないシンプルなデザインが特徴で、性別や年齢、シチュエーションを問わずに使ってもらうことを想定している。主力製品はマチや持ち手、本体といったパーツごとに切り貼りせず、1枚の合成皮革から作っている。材料コストは増えるが、デザイン性が高まる1枚の革にこだわって製造を続けてきた。

 東京・中野に直営店を構えるほか、パルコの売り場などでも展開している。18年にはフランス・パリの老舗百貨店ギャラリー・ラファイエットにも出荷し、販路は海外にも広がり始めている。

 COETを立ち上げた14年前は、クラウドファンディングもECサイトも一般的ではなかった。今よりも1人メイカーを取り巻く環境は厳しかったはずだ。生産を委託する職人らの信頼を得て生産体制を構築するとともに、地道に販路を開拓してブランドを育てていった。

中島多恵子氏は、バッグ作りの経験がないまま、COETを立ち上げた(東京・中野にあるCOETの工房兼店舗)

 中島氏は芸術大学を中退後、アルバイトに明け暮れていた。やりたいことを見つけられずに日々を過ごす中、ふと「自分の着たい服がない」と気づく。既製の服を解体して構造を学び、試しに作ってみた。友人のアパレル店に置いてもらうと、口コミで評判が広がった。