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 前回の「副業1500日、携行ホワイトボードへの執念が生んだヒット」では、副業として製造業を始め、成長する1人メイカーを取り上げた。1人メイカーという言葉が浸透する以前から1人で製造業を手掛け、10年近く生き残っている“老舗”といえる会社がある。元大手メーカーの技術者、八木啓太氏が設立したビーサイズ(横浜市)だ。

 デスクライトから事業を起こし、スマートフォンの充電器、GPSによる子供の見守り機器と、分野の異なる3つの製品を次々に発売してきた。1人メイカーは量産化に協力してくれる工場が少なく、1つの製品を生み出すことさえ難しい。3つの製品を連続して世に出せた理由を探った。

ビーサイズの八木啓太代表。右側が最初に開発したデスクライト

 「手術用の照明としてLEDチップを使わないか」。大学院修了後、富士フイルムで医療機器の設計者として働き始めて数年たったころのことだった。八木氏は業者が持ち込んだLEDチップに目を奪われた。LEDの光は青白いことも多いが、紹介されたLEDは自然な光を発し、物の色が正しく見える特長がある。

 職場で採用には至らなかったが、サンプルを使ってデスクライトを自作してみた。シンプルな構造にして量産すればコアなファンが付くかもしれない。商品化してみたいと思った八木氏は、退職金と貯金の1000万円を元手に、2011年に起業した。

 起業直後から自宅にこもって1人で設計に取り組んだ。設計図作成のCADソフトと3Dプリンターの低価格化が進み、個人でも利用できるようになっていた。こうしたツールを使った試作品は、そのまま量産化に持ち込めるわけではない。それでも「速いスピードで質を一定のレベルまで高められる」と感じた。