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 それでもなお、会社側の動きは緩慢だった。最初は「新型コロナによる感染拡大の危険があるので、今は交渉できない」と話し合いを拒否。オンラインでの交渉を求めると、「ネットで交渉するために必要なIT設備が整っていない」と先延ばしにされた。

 ようやく会社側に要望書を手渡したのは5月中旬。間に入った団体は、休業補償の原資がないのであれば、雇用調整金を企業として申請したらどうかと打診したが、「そもそも休業補償を払う気はないので、申請する必要がない」と、取り付く島もない答えが返ってきた。

 結局、騒動は意外な形で決着がつく。1回目の交渉決裂後、団体が記者会見を開いたところ、企業イメージを気にしてか、突然、会社側がホームページで非正規社員への休業補償支給を発表した。補償額は法規定の6割を上回る額を払うのだという。

 それでもA氏の気持ちは晴れない。「本当に支払われるか分からない」ことに加え、一連のやり取りを通じて会社側からの言葉が忘れられないからだ。

 「『気持ちは理解できる』や『検討はしてみる』といった言葉が1つでもあれば救われた。でもそれさえもらえず、説明をコロコロ変えながら『非正規はノーワーク、ノーペイ』と繰り返す。自分が知らなかっただけで、本当は“怖い会社”だということを思い知らされた」