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 周囲が危機的状況に陥ると、経済合理性にとらわれず、顧客や取引先、従業員、社会のために動く──。仙台市に本社を置くアイリスオーヤマも、そんな印象が強い会社だ。

 2011年3月に地元を襲った東日本大震災の際には、LED照明を急きょ大増産した。震災発生から10日後には、大山健太郎会長自ら中国・大連に行き、現地LED工場の生産能力を3倍に引き上げるように指示。「日本の電力の約15%を使っている照明をLED化すれば、6%の電力削減が見込める。増産し日本の電力危機を救うのは我が社の義務」と考えての行動だった。

実は「覚悟が必要な判断」

 緊急時の不足品の増産は、そのときは世間から称賛される。が、混乱が収まった後に在庫や生産設備が過剰になる危険性も少なくない。幸いこのときは、約2カ月後の5月にLED照明の受注量が前年の3~5倍に達したうえ、その後の市場が拡大したため事なきを得たが、想像する以上に「覚悟が必要な決断」だったのは間違いない。

今でこそ落ち着いたが、コロナ禍でマスクが購入できないケースが目立った(写真:共同通信)

 そしてコロナ禍の20年、全国的にマスクの需給がひっ迫し、同社はマスクの増産に乗り出した。マスク自体は07年から中国で生産しているが、6月から角田工場(宮城県角田市)でも月1億5000万枚を生産。中国での生産分と合わせて国内に月間2億3000万枚供給する体制を早急に構築する計画だ。

 投資総額は約30億円。一時期、実勢価格が7倍まで跳ね上がったマスクだが、今は落ち着きを取り戻しつつある。それでも「感染を防ぐ意識は世界中に残り、投資は必ず回収できる」と、アイリスオーヤマはみる。