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 「小売業だから労働時間は短くはないし、給料や社内制度などにも不満が全くないとは言えない。でも成長至上主義である半面、最近は働き方改革を進めているし、アットホームな雰囲気も実は気に入っている。つまり、いいところもあれば悪いところもある、そんな普通の会社だと思っていた。だからこそ、4月以降の従業員思いの対応はいい意味で意外だったし、少し感動してしまいました」

 大手スーパー、ライフコーポレーションの現役社員はこう話す。

 同社は4月、新型コロナウイルス対応への感謝として全従業員約4万人に「緊急特別感謝金」を支給した。賞与で従業員に利益を還元したことはあるが、感謝金を配るのは初めて。正社員、パート・アルバイトの全職種が対象で、感謝金の総額は3億円という。

 冷静に考えれば4万人で割ると1人7500円。だが、冒頭の社員は「金額の問題ではない」と話す。

1日で決めた3億円の出費

 何よりまず、対応が早かった。きっかけは3月31日夕方、岩崎高治社長が従業員を激励するため、東京の世田谷区、大田区の2店舗を視察したこと。現場の奮闘を見た岩崎氏は午後11時半すぎ、他の取締役へこんな内容のメールを打つ。「きょう店舗を見回ったが、皆頑張ってくれている。それに報いるため、全従業員を対象に感謝金を出したい」

 昼までに全役員から了承を得て、3億円の臨時出費の方向性が固まり、翌日までには全従業員に知らされた。まだ政府による緊急事態宣言発令の前で、新型コロナの影響がどこまで広がるか分からなかった時期。当然、主だった同業他社の先陣を切っての感謝金支給となった。