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城南村田の青沼隆宏社長は「フェースシールドの生産を通じて、教えてもらったことの方が多い」と話す

 首都圏をはじめ今、少しずつ経済活動が戻ってきているとはいえ、コロナとの戦いは長期戦必至だ。「第2波」「第3波」の脅威をぬぐい去ることも容易ではなさそうだ。城南村田の本業も依然傷んだままであり、元通りにならない可能性もちらつき始めている。

 また、今後市販するフェースシールドの存在が、落ち込んだ金型の売り上げを余りあるほど補ってくれるわけではないことも、十二分に分かっている。「それでも、この町工場にとっては『教えてもらっているもの』『頂いたもの』の方がはるかに大きい」と、青沼氏は話す。

 1つの効能としては、閉塞感が漂っていた従業員を勇気づけたことがある。一生懸命作り届けたフェースシールドに、「ありがとう」「助かった」という声が届くたび、いつになく従業員の顔と声が明るくなった。「密」を避けるため、勤務時間はコロナ前と比べて減らしているものの、それぞれの仕事の密度、濃度が上がってきていると実感する。

男気の効能? ぐらつき始めた「情より数字」

 もう1つの効能は、手話通訳の人たちへの提供事例が示すように、「今まで気づくことさえできなかったことが理解できるようになったこと」だ。

 急きょ作り上げたフェースシールドは、ユーザーの声をもとに使いやすさや頑丈さに、技術面からのカイゼンを加え続けている。当たり前の話に思えるかもしれないが、とりわけトレーや金型という形で主役の菓子の下に隠れ、エンドユーザーの声が届きにくかった町工場だけに、利用者の声は新鮮そのものだ。「本業へのかかわり方も今後、きっと変わってくるだろう」と考える。

 そして、「経営は情より数字」と、ある意味割り切ってきた青沼氏の経営方針や心境が少なからず変化し始めていると自認する。「情や衝動も、やはり大事な要素なんだな」と。未曽有の危機の下で「男気」を示そうという試み、志にもとづいて打って出た一手には、想定外の副産物と波及効果も潜んでいたようだ。

■「男気企業~本性は危機でこそ現れる」

 普段は立派な経営理念などを掲げていても、いざ危機になると自社の利益だけを優先し、何もしない企業があります。片や、普段は地道に商売をし、多くを語らないけれども、ピンチのときに自分が損をしても人の役に立とうする企業があります。企業の本性は、苦境のときにこそ現れるのではないか。こんな問題意識のもと、今連載では「男気企業」と「非男気企業」の姿に迫っていきます。

■記事ラインアップ
▼リスク承知で80人大雇用 地方米菓メーカーの心意気
▼危機こそ「社員に優しい」 “最強スーパー”の意外な素顔
▼大切なのは顧客と従業員  “不器用企業”は「群馬の誇り」
▼元祖男気企業の哲学 、「人助けこそが経営」
▼コロナで本性見えた性悪企業、社員を苦しめる手口の数々
(内容、タイトルは変更になる可能性があります)

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