(写真:PIXTA)

 この連載の前回で、4月の自殺者数が前年比で大きく減少した「謎」について専門家に聞いた。テレワークの拡大によって出社や登校に伴う対人ストレスが減少し、家族の絆で癒やされた――。精神科医の夏目誠氏はそんな通説に一定の同意を示しつつ、しかし、自殺件数減少の理由の大きな部分を占めるのは「思考停止」だとした。

 前回の記事を配信したあとに5月の統計も発表されたが、4月と傾向は変わらなかった。だが、5月25日に緊急事態宣言が解除され、今まさに経済活動が再開し始めている。冷却されて血行が抑制されていた打撲傷の患部に血流が戻ったときのように、企業業績や家計が傷の痛みを実感するのはこれからだ。そのうずきに「思考停止」が解けたらどうなってしまうのか。

 今回は、その先に起こりうる未来を探ってみたい。

 連載の初回で示したように、経済情勢と自殺者数には相関があり、相関の度合いも明らかになっている。また、新型コロナウイルスによる経済への影響はまだ全容が分からないが、予測するシナリオが示され始めている。過去の係数と、今回推定されている実数を掛け合わせることで、どの程度の自殺者増を見込むべきなのかを弾き出したのが、連載初回でも示した京都大学レジリエンス実践ユニットによるシミュレーションだ。

 いわく、国内総生産(GDP)の縮小に伴う失業率の増加で、累計自殺者数が今後19~27年間にわたって累計14万~27万人増加する。その内容を詳しく見ていこう。

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この記事はシリーズ「新型コロナ、もう1つの命の危機」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。