自殺者数が累計で14万~27万人増えるという試算

 4月末に、実現しないでもらいたいと願わずにはいられない不気味なシミュレーションが発表された。

 京都大学レジリエンス実践ユニットの発表によれば、4月時点の推計では新型コロナウイルスの感染拡大が1年間で収束した場合は向こう19年間で自殺者が累計約14万人増える。2年間で収束した場合は27年間で約27万人増える、というものだ。社会にとって、莫大な損失と言っていいだろう。感染症による直接の死と併せて、この自らによる死についても、日本は向き合うことが求められる。

 この連載では、こうした専門家たちの知見を取材しながら、経済との関わりにおいて自殺という現象を改めて考えていきたい。1998年の再来に警鐘を鳴らす上記のシミュレーションの詳細については次々回の記事で触れる。

 新型コロナウイルスは、目を背けてきた社会のゆがみを浮かび上がらせ、加速させている。自殺を防ぐにはそうしたゆがみにも目を向ける必要があるかもしれない。

 自殺総合対策大綱では、自殺は個人の自由な意思や選択の結果ではなく、「その多くが追い込まれた末の死」との基本認識を示している。自殺の背景には健康問題や過労、生活困窮、家庭環境、いじめや孤立などの様々な要因が複雑に重なり合っていると言われており、簡単には語れるものではない。ただ、自殺行動に至るまでに追い込む経済社会があったことは否定できないだろう。行政や民間による対策で自殺者数は減ってきてはいるものの、日本は、1998年以降、G7(主要7カ国)の中で最も自殺率が高いという不名誉な状態を続けてきた。

 取材と執筆を同時並行で進めることから記事の掲載が不定期になることをあらかじめお断りしておきたい(読み逃しがないようにフォロー機能を活用してもらいたい)。次回は早速「4月の謎」を精神科医にぶつけてみる。

この記事はシリーズ「新型コロナ、もう1つの命の危機」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。