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 ネットにまん延するデマ情報を食い止めるには、情報の出どころをつきとめ、真偽を確かめ、正しい情報を広く知らしめる必要がある。この作業を「ファクトチェック」と呼ぶ。デマ情報と対峙する世界の多くのメディアが今、ファクトチェックの重要性に着目し、付加価値の高い新たなコンテンツとして発信し始めている。

 ファクトチェックの社会的認知度は日本でまだ低いが、SNS時代の深刻化するデマから社会を守る防波堤として、世界的に大きな役割が期待されている。

(写真:PIXTA)

 ファクトチェックの先駆け的な存在が、ネットニュースなどの事業を手掛けるバズフィードジャパン(東京・千代田)である。

 米国に本部を置くバズフィードは大統領選でデマが飛び交った2016年ごろからフェイクニュースの検証に乗り出した。日本では16年の熊本地震の頃からデマの検証記事を出し始め、17年から現在の形でのファクトチェックを開始した。バズフィードジャパンの貫洞欣寛氏によると「多い時は、週に3~4本のファクトチェック記事を配信している」という。

 例えば、新型コロナウイルス関連では、中国から英国に発送された検査キットに新型コロナのウイルスが付着しており、英国のジョンソン首相が怒りをあらわにしているというデマ情報があった。フェイスブックとツイッターで5万回以上拡散されたというが、発信源をたどると、「中国共産党に批判的な米国のサイトに行き着いた」(貫洞氏)。バズフィードはこの経緯を記事化して配信した。

 政治的に扇動しようとするフェイクニュースは、党派性の強いサイトが元になっていることがある。例えば、2018年に玉城デニー氏が当選した沖縄県知事選挙だ。

 この時には「沖縄県知事選挙2018」というサイトが突如立ち上がり、検索上位に躍り出た。ところが、このサイトの実態は玉城デニー氏の陣営を批判するためだけに作られた政治目的のサイトだったという。「サーバー情報から住所を特定し実際に出向いたが、実態が確認できなかった。誰が作ったのかはいまだに分からない」と貫洞氏は語る。

「正義感」がデマを広げる

 ただ、こうした意図的な情報操作は一部で、「多くのデマは善意と正義感によって拡散されている」(貫洞氏)という。

 例えば、昨年起きた常磐道でのあおり運転事件。この事件ではあおり運転をしていた車に同乗し逮捕された女性について、ネットでは特定しようという動きがあったが、結局犯人として拡散された女性は全く関係がなかった。「この時も拡散した人たちは、拡散された女性を本当に犯人であると信じ込み、正義感からリツイートしていた」(貫洞氏)。

 ファクトチェック記事を配信するのは、メディアとしての信頼を勝ち取るための試みでもあった。「我々はインターネットメディア。だからこそネット上の情報を信頼されるものにしなくてはならない」と貫洞氏は語る。特に新型コロナによる社会不安が広がっている今は、真偽が不確かな情報を検証するコンテンツの存在意義が高まっているという。