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 新型コロナウイルスの感染拡大が不動産市場を揺さぶっている。不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数は、2020年の年初から堅調に推移していたが、3月に暴落して節目となる2000ポイントを大幅に下回った。直近は1700ポイント台に回復したものの、コロナ防疫の成否によっては予断を許さない状況が続く。REITの大幅下落は不動産セクターにおける「強者」と「弱者」をあぶり出した。コロナ後の不動産市場の行方を、ドイチェ・アセット・マネジメントの小夫孝一郎オルタナティブ調査部長に聞いた。

小夫孝一郎(おぶ・こういちろう)氏
ドイチェ・アセット・マネジメント オルタナティブ調査部長  東京大学経済学部卒。1995年4月、住友銀行(現三井住友銀行)入行。98年より同行調査部アナリスト。2001年より、ロンドン駐在のシニア・リサーチ・アナリストとして欧州不動産・テレコムセクターの調査を担当。06年より企業調査部(東京本部)で建設・不動産チームのグループ長を歴任。07年、ドイツ証券不動産投資銀行部に所属し、日本およびアジア太平洋地域の不動産市場の調査を担当。11年より日・韓リサーチ・ヘッド、13年よりアジア太平洋リサーチ&ストラテジー・ヘッド。15年よりドイツ銀行グループのドイチェ・アセット・マネジメントに所属し、19年よりオルタナティブ調査部長を務める。

新型コロナウイルス感染症の拡大によってREITが大きく下落しました。投資家が敬遠した不動産セクターはどの分野だったのでしょうか。

 REITの投資口価格の変動は、コロナ禍の影響を受けた不動産市場の先行きを占う指標となります。J-REITをセクター別に分類すると「オフィス」「賃貸住宅」「商業施設」「物流施設」「ホテル」に大別されます。2019年末を基準点とした指標の変動を見ると、一番悪化しているセクターは「ホテル」です。次いで「商業施設」への影響が大きい。

 ホテルは冬の時代が続くでしょう。これまでホテルの投資ブームが景気の起爆剤として不動産市場の拡大をけん引してきました。ここ数年は、オフィスビルが1棟建つ間にホテルが10~20棟建つスピードで開発が続いた。しかし、世界各地でロックダウン(都市封鎖)が解除されても、当面は海外旅行熱が盛り上がることはないでしょう。

 21年の東京五輪・パラリンピックの開催も不透明になってきた。ホテルREITの価格推移を見ていると五輪開催に危うさを感じている投資家が増えているようです。金融機関もホテル開発への融資は厳しくするはずですから。

 ホテルは「どうすれば倒産しないか」を考えるフェーズです。宿泊客の減少で稼働率が低下しており、運営すれば固定費を垂れ流す状態が続く。既存のホテルは2割が稼働できなくなり、幽霊ビルになる可能性もあります。どのような打開策があるか分かりませんが、相当厳しい状況であることに間違いはないでしょう。

 仮にホテルからマンションへの改修を試みても、バルコニーがなかったり、配管をうまく分岐できなかったりで、一筋縄ではいきません。そうなれば、建物の解体が資金計画の前提条件となり、売りに出しても買いたたかれることになる。こうした機会を捉えて、プライベート・エクイティファンドなどが倒産するホテルを物色するのではないでしょうか。

19年末を基準点としたセクター別のREIT指数の推移(20年5月22日現在)。コロナ禍の悪影響は「ホテル」や「商業施設」に表れている(資料:ドイチェ・アセット・マネジメント提供)