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日産自動車は6月29日、横浜市内で定時株主総会を開催した。2019年度に約6700億円の最終赤字を計上し、期末配当は無配。株価は1年前の半分に落ち、20年度以降も回復の見通しは立っていない。そんな状況で株主が問いかけたのは、経営陣の「基本姿勢」のあり方だった。

 「総会の終了は11時めどということだが、質問整理券を受け取った人の質問をすべて受けてはどうか。新型コロナウイルスの心配がある中でも、6千数百億円の赤字があって、意見を述べたい人が来ているのだから」。質疑応答の冒頭、株主からそんな提案があった。

 株主総会の開始は10時。日産が1時間ほどで総会を終わらせたいとした意図は、新型コロナ対策にあった。事前にオンライン中継での出席を勧め、会場では壇上の役員を減らし、お互いの距離を置いた。密室空間にいる時間はできるだけ短くしなければ、という判断だった。

 会場の拍手を受け、内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は「できるだけ多くの質問を受けたいと思う」と株主の提案を受け止めた。結局、総会は12時近くまで続き、内田氏が設けた「1人1問、2分以内」いう質問の制限もないがしろとなった。

 「業績も技術も大事だが、その前提は信頼だ。今の日産に欠けているのは信頼という言葉に尽きる」──。質問に立った株主が口にしたこの言葉が、日産の現状の厳しさを表している。内田社長はいささか傲慢だった会社の気質を変え、経営と現場、販売店やサプライヤーなどとの関係を構築していくことを改革の最重要課題として挙げる。それは株式市場、株主との関係においても言えることだ。