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[うちだ・まこと]1966年生まれ。91年に同志社大学神学部を卒業、日商岩井(現双日)に入社。2003年に日産に中途入社し、アライアンス共同購買部門に配属。新興国向けブランド「ダットサン」の収益管理責任者などを経て16年常務執行役員。18年専務執行役員。東風汽車有限公司総裁として中国事業を率い、19年12月から現職。小学校時代はエジプト、中高時代はマレーシアで過ごした。

日産自動車のかじ取り役を任されて半年がたちました。2020年3月期決算では営業損益も赤字でした。このような状況に陥ったのはなぜでしょうか。

内田誠・日産自動車社長兼CEO(最高経営責任者、以下内田氏):1999年に仏ルノーの出資を受けて以降、拡大路線を大きく進めました。台数を追う視点は間違っていなかったのですが、結果として日本などでの新車投入が後手に回ってしまいました。

 これはまずい、と気付く人はいても、社内でものを言える雰囲気がなかったことも問題でした。昨年12月に社長に就任し、何に「選択と集中」すべきかを考えてきました。それを形にしたのが今年5月に発表した事業構造改革です。

 失敗はきちんと認めなくてはなりません。トランスフォーメーションや構造改革では足りません。言葉は少し乱暴ですが、日産に革命を起こしたいのです。革命というのは壊してゼロからつくるということ。社員がそういった感覚を持って一丸となり、まず社内が変わらなければ信頼は取り戻せません。

具体的には、どのように革命を起こそうとしているのでしょうか。

内田氏:社長就任以来、(計画や予算策定の)プロセスを改善してきました。チャレンジャブルな目標を共有し着実に積み上げていくスタイルに転換しています。従来はトップダウンがほとんどでしたが、今はボトムアップもある。常にリファレンス(参考にしたもの)に戻れる形にしておくことが重要です。

 20年3月期に資産の減損を計上し、販売目標を挑戦できるレベルにしました。21年に営業利益率2%以上という設定も、本当にこれでいいのかという議論を重ねました。過度なストレッチを入れず、対外的に言ったことを確実に実行する。(無理しがちだった文化を)根本から見直していきます。

日産の力はこんなものではない

大会社の社員はどこかで「うちは大丈夫だ」と思いがちです。本社の社員が危機感を持てるかがカギとなりそうです。

内田氏:社員には危機感が相当ありますよ。我々経営層に「事業構造改革を断行する覚悟はあるのか」と言ってくる人もいます。事業所に行くと「私には何ができますか」と声がかかります。これらは日産を再生させるための強い力です。

 もちろん、決算の数字の意味、これから何をしなければならないのかを理解してもらわなければなりません。一人ひとりが(革命を)進めるという気持ちになってもらうため、コミュニケーションは意識して深めていきます。日産の力はこんなものではありませんよ。

日産の販売不振の原因として指摘されるのが新車の経過年数を指す「車齢」の古さです。拡大路線の中で開発が遅れてしまったということでしょうか。

内田氏:そういった側面もありますが、カバーする範囲が広がったことで、強い車ではなく、売りやすい車に走ってしまった傾向があります。広げることは悪くないのですが、広げた上できちんと売っていく体制を築けなかった。

 北米市場では数を稼ぐため古いモデルに販売支援金を出し、それが日産のバリューを毀損していました。今後18カ月で12車種を出しますが、販売の質を向上させています。

 短期的な台数を追うのではなく、持続的な販売につなげていく取り組みは前任(の西川広人社長時代)から始めましたが、販売店などに理解してもらうのには時間がかかります。これからはパートナーと連携を深めていくことがカギになります。我々の技術面などの強さを明確にし、その良さを体感、共有してもらい、バリューを売る方向にシフトする。その中で適正な車齢にしていくことが重要です。